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![]() 世界の通信企業の戦略提携図(2000年6月15日現在) |
31. フランス・テレコムのオレンジ買収フランス・テレコム(FT)とボーダフォン・エアタッチ(VOD)は2000年5月30日、VOD子会社オレンジをFTが買収することで合意したと発表した。オレンジは英国第3位の携帯電話会社だが、99年10月にマンネスマンに買収されて2000年2月のVODマンネスマン買収合意に年内の放出が含まれ、同年4月に独禁規制の観点からのEU勧告があって、以来多数の買い手が競り合ってきた。買収金額370億ドルに債務引受26億ドルを加えた総額396億ドルは、マンネスマンが支払った金額の33.3%増に相当し、それにオレンジが落札した次世代(3G)携帯電話免許代64.4億ドルを加えるとFTの負担は巨額になるが、VODの約3,760万加入に次ぐ約2,030万加入の欧州第2位の地位が確保され、FTの携帯電話加入数は世界16カ国で約3000万に達する。FTは396億ドルを現金と株式ほぼ半々に支払い、VODはFT株式の10%を保有することとなる。 携帯電話加入数争奪戦の活発化に伴い、欧州各国政府の3G免許競争入札による資金調達の目論みも、ドイツは6免許で500億ドル、フランスは4免許で310億ドルなどと膨らんできた。予想外の収入見通しで国債発行計画を見直す国もあり、フランス政府は年金基金に当てることを考えるなど、使途も検討され始めている。EUレベルでは現在のところ自然の勢いとして是認する者と利用者負担への波及を懸念する者とに委員が分かれている。ともかく、英国の入札結果に基づく欧米金融機関の取りまとめによれば、英国・ドイツ・フランス・イタリア・オランダ5カ国の調達総額見通しは約1,500億ドルと予測される。 7月31日予定のドイツの3G競争入札への参加資格者11社が5月31日に以下のとおり発表された。
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32.ベルテルスマンとテレフォニカのeコマース提携ドイツのベルテルスマン(Bertelsmann AG)は、出版・新聞・雑誌・映画・音楽・放送と多分野に展開する世界最大のメディア企業でありながら、従来から出版や音楽ではグローバル化しても、放送・AV分野では比較的受け身の姿勢であった。これはベルテルスマン財団(従業員年金等)とモーンファミリーを中心とする株式非公開企業であり、ドイツ市場確保を第一義としてきた伝統による。それがミッデルホフ(Thomas Middelhoff)が会長に就任した98年11月前後からグローバル化やディジタル化に対応する積極策に転じ、米国出版大手のランダム・ハウスを14億ドルで買収のうえ、書籍・音楽・ビデオ等のオンライン販売事業BOL.comや音楽配信事業Get Music、さらに米国一の書籍小売店バーンズ・アンド・ノーブルとの折半出資オンライン書籍販売サービスbarnesandnoble.comを開始し、既報のとおり(マンスリ・フォーカスNo.8)、ダイムラー・クライスラーとの合弁企業MediaWaysを立ち上げた。 スペインのテレフォニカ(TEF)のインターネット子会社テラ・ネットワーク(Terra Networks SA)が5月16日に米国のインターネット検索企業ライコス(Lycos)を125億ドルで買収、Terra Lycos Inc.を設立することで合意するや、ベルテルスマンは向こう5年間Terra Lycos から広告・斡旋・管理サービスを10億ドル分購入する契約を結び、欧州・中南米のスペイン語使用者に向けたオンライン・メディア・ストアーの合弁事業(資本構成ベルテルスマン75%、Terra Lycos25%)を興すことで合意し、TEF傘下のテレビ会社アンテナ3に11%出資することとした。一方、TEFは6月5日にベルテルスマン/ダイムラー・クライスラー合弁企業MediaWaysを株式交換(16億ドル相当)で買収することで合意した。 こうして親企業が株式交換M&Aに馴染まないところを工夫して、ベルテルスマンはTEFとのeコマース志向総合的コンテンツ/サービス提携を造り上げた。 ベルテルスマンでは2000年6月1日に、ベルテルスマン・eコマース・グループが発足し、ハンブルグとニューヨークに上場するその持株会社社長兼CEOに前AOL-Europe社長アンドレア・シュミット(Andreas Schmidt)が任命され、eコマース・mコマース・広帯域コマース・ベンチャーキャピタル・戦略的提携の5事業本部を統括することとなった。将来分割の可能性もあると言う。 |
33.カナダに関連するM&Aが長引くフランスのコングロマリットVIVENDI(ビベンディ)は2000年6月13日にカナダのコングロマリットThe Seagram(シーグラム)と買収交渉を行っていると発表した。 ビベンディは既報のとおり(マンスリー・フォーカスNo.7企業解説)、通信企業SFRやCegetel、地上波有料放送カナル・プラスを含む多角化企業が98年にグループを名乗り、VODとのインターネット・ポータル合弁事業の発足準備中で、大手ウィスキーメーカーでユニバーサル映画・Polygramレコードなどでメディア年商約100億ドルをあげているシーグラムのコンテンツや財務の蓄積に魅力を感じたものと思われる。しかし、ビベンディのシーグラム買収は3月から噂になっており、交渉の成否は合意に至る迄推量し難いものである。一方、カナダ一の通信企業グループBCE(Bell Canada Enterprise、ベル・カナダ・エンタープライズ)も6月13日にテレグローブ(Teleglobe Inc.)に2月15日に提示した65.2億ドルの買収案を再検討していることを明らかにした。 BCEはカナダ一の伝統的電話事業者ベル・カナダの株式80%、世界第5位の通信機器メーカーNortel Networks(NT)の株式37%、世界第18位の国際通信事業者Teleglobeの株式23%をそれぞれ保有する総合的通信事業者で、既報のとおり(マンスリー・フォーカスNo.9)、この4月末の時価総額739億ドルにより世界第14位のメガ・キャリアーである。 BCEは「非Nortel部門の利益をより良く表現するため」2000年1月26日にBCE株主にNT持株35%を無償交付する(2%は引き続き保有)分割案を提案、4月26日と27日の両社株主総会の決議を得たうえ4月28日に規制当局の承認を得て、5月1日~5日に手続を行った。ところが、BCE株価が3月27日の最高値から半値に急落、6月8日現在の時価総額は161億ドルに縮小してメガキャリアーTop20リストに載らないほどとなった。(表参照)
(2000年5月末現在) 単位:億ドル
こうした事情がどう働いているかは分からないが、BCEは赤字傾向の小規模国際通信事業者Teleglobe(年商約100億ドル、国際売上比率80%)を完全買収する意欲を失い、提案額の引き下げを企図したものと思われる。 収益性の良いNT事業を切り離しBCE株主に交付すればBCE株価が下がるのは当然であり、NTTとNTT DoCoMonoの関係に似て興味深いが、何故NTの分離を計画したのかは謎である。 カナダに関連する二つのM&Aの今後の展開が注目される。 |
顧問 高橋洋文(編集室宛:nl@icr.co.jp) (最終更新:2000.6) |
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