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世界の通信企業の戦略提携図(2001年2月5日現在)

55. AOLタイム・ワーナー誕生の意義

 AOLとタイム・ワーナー(TWX)の合併は、2000年12月14日付け連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)条件付条件に引き続き、2001年1月10日に連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)が条件付で承認したことにより、合意1年1日後の1月11日に実施され、AOLタイム・ワーナー(AOL TW)が誕生した。  FTCの条件は、(1)ケーブルTV網を最低3社に開放し、AOL TWを含め4社以上でのサービス競争を実現すること、(2)ケーブルTV網による双方向TVサービスについて、AOL TWは自社傘下の放送局と外部の放送局を同じ条件で扱わなければならない、(3)AOLの会話型メール「インスタント・メッセージ」の独占問題についてはFCCの判断に委ねると言うもので、AOL TWは(1)と(2)について即座に受け入れていた。問題の「インスタント・メッセージ」についてFCCは、(1)と同様最低3社にサービスを開放することなどを条件としたが、対象を将来の高度なAVベース「インスタント・メッセージ」(AIS)、つまり高速テレビ会議システムに限定し、現行テキストメッセージは除外したのでAOL TWはこれを歓迎した。

 新組織はAOLとTWXがともに新親会社AOL TWの100%子会社となり、旧AOLは双方向サービスグループ(The Interactive Services Group)、双方向設備グループ(The Interactive Properties Group)、AOLインターナショナル・グループ(The AOL International Group)およびネットスケープ企業グループ(Netscape Enterprise Group)の4ループに再編された。双方向サービスグループにはAOL service、CompuServ、Netscape Netcenter、AOL.com portal、the AOLTV service、AOL Wireless servicesが所属し、双方向設備グループにはDigital City,Inc.、ICQ、AOL Instant Messenger、Moviefone,Inc.、Spinner.com、Winamp and SHOUTcast、MapQuest.comが所属し、AOLインターナショナル・グループは米国外のAOL/CompuServサービス・運営に当たり、ネットスケープ企業グループはソフトウエア・専門サービス・コンサルティング・訓練に従事する。

 問題は規制条件が課せられたうえ、リアル(伝統メディア)とサイバー(インターネット)の理想的組み合せと囃された1年前に比べ、経済金融環境が様変わりして株式の時価総額が半分以下となったのに、新会社AOL TWの幹部ポストは旧AOL幹部に偏り、旧TWX系からの不満が露になる始末であった。

 しかし、2001年1月30日に発表されたAOL TWの2000年10月〜12月期決算は、売上高が前年同期比+8.2%の10,231百万ドル、純損益が前年の-201百万ドルより赤字大幅増の-1,092百万ドルとなったものの、利子税金償却前利益(EBITDA)は前年同期の21億ドルより14%上がった24億ドルを確保し証券筋の期待に叶うものであった。しかも、インターネット加入者数2,670万を含む雑誌・ケーブルTVなど契約者数は2000年末に1.3億名に達し、その定額収入が総収入の半分を超え、2000年後半におけるTWX映画・音楽部門の広告収入伸び悩みや高コストを補うものであった。

 したがって、表「世界の情報通信サービスプロバイダーT0p20(2001年2月2日現在)」に見る通り、AOL TWの株価は一ヶ月で50%も上がり、その時価総額は20傑のトップに躍り出たのである。

 AOL TWの将来はモバイル・インターネットの普及とビデオ・オン・デンマンド(VOD)の実現にかかっている。すでに衛星放送事業者(DirecTV)や双方 向TVメーカー(Philipps)とのAOLTV提携、移動通信事業者(Sprint PCS、AT&T Wireless)とのAOL Mobile提携、コンテンツ業者とのAol PlusやAccess to Aolなどが取り組まれているが、とにかくアクセスを普及させようと言う「何処でも何とか(Anywhere, anyhow)戦略」の今後が注目される。

56. テレコム大合併の波は静まる

 2001年1月が終わって米国経済の減速が明らかとなり、AOLタイムワーナーのような巨大M&Aが過去のものとなったこともはっきりした。実際1999年には一件500億ドル以上の大合併が世界中で7件あったのに、AOLタイムワーナー合併合意の後2000年中には英国の製薬会社Glaxo WellcomeとSmithKline Beechamの合併1件しかなった。J.P.Morgan Chaseによれば、世界のM&A成約額は1999年の3.3兆ドルから3.5 兆ドルに伸びてはいるが、2000年の巨大合併のほとんどは第1四半期に属し、12月の成約額は98年9月の金融危機以降で最小の630億ドルであったと言う。全産業をおおった米国の第5次メガM&Aブームは過ぎ去ったようである。2000年に世界で起こったメガM&Aの40%、1.5兆ドルは技術・メディア・テレコム分野であったが、2001年には同様のことが起きそうもない。

 巨大合併の波が静まるなかで通信会社向け融資や通信会社の大型起債や政府持株売却が目立ってきており、特に次世代(3G)携帯電話免許費用や設備投資用の資金調達のため、主要通信企業が傘下の携帯電話会社を上場して持株を売却するケースが注目を集めている。

 例えば、フランス・テレコムは移動通信子会社オレンジを2月12日に上場する。ボーダフォンがオレンジ売却に際して取得したフランス・テレコム株9.9%を2002年3月までに買い戻し、また80億ユーロの設備投資を行う資金を調達する必要があり、市場のオレンジ評価額600~650億ユーロを前提にオレンジ株式の20%を上場すると見られる。このほかフランス・テレコムはオレンジに関し33億ユーロの転換社債を発行する。

 1月31日に締切られたフランス政府の3G免許は、4免許交付予定に対しフランス・テレコム・モビル(FTM)とSFR(セジェテル)しか申し込まない異例の事態となった。免許料が高すぎることを理由に、フランスの複合企業スエズ・リオネーズとスペインのテレフォニカ・モビレスの合弁事業が1月24日に応札を断念し、フランス第3位の携帯電話会社ブイグ・テレコムも1月30日に不参加を表明したからである。4免許で1,300億フランの免許料収入を見込んでいたフランス政府は収入半減の事態に直面し、残る2免許について新たな選考を行う意向を表明した。フランス政府は英国の5免許落札総額385億ユーロとドイツの5免許落札総額508億ユーロをもとに、2000年6月に4免許200億ユーロを決定したが、当時としてはそれほど高額と見られていなかった。テレフォニカ・モビレスもブイグ・テレコムもフランス移動通信市場に関心は持っており、不参加は免許料値下げ作戦と見られる。

 今回の出来事は、5免許を巡る6社の入札途上で1 社が脱落したイタリア、4免許を5社のうち2社が合併して入札が成立しなかったスイス、5免許に対して応募3社で入札が中止されたポーランドに次ぐものだが、携帯電話ブームが来て去って移動通信事業経営が高度化し、成長への期待がモバイル・インターネットに移ったことを実感させる。

57. BCE グローブメディアの設立とBCE再編成

 カナダ一の通信企業グループBCE(Bell Canada Enterprise)と専門情報出版社トムソン(The Thomson Corp.)は、2001年1月9日に、2000年9月に合意した合弁事業BCE グローブメディア(BCE Globemedia)の設立手続きを完了したと発表した。

 資産額が27億ドルあるBCE Globemediaの資本構成は、BCE70.1%、トムソン20%、トムソンファミリーの持株会社ウッドブリッジ(Woodbridge Co.Ltd)9.9%で、トムソン側が日刊紙The GlobeやMail、Globe Tnteractive Webサイト、ビジネスTVチャンネルROBTVの50%株式を拠出し、BCE側は2000年2月に15億ドルで買収した民間放送CTV Inc.、Sympatico Internet Portalを拠出している。新会社の2001年の売上高は9億ドルと見込まれる。カナダ競争庁は、新聞、インターネット、テレビの広告収入は相互干渉するものではないので、合併しても競争を損なうことはないとした。

 BCEは2000年5月に情報通信機器メーカーNortel Networksを独立させ、10月に決定し12月1日に実施した組織再編成では、持株会社BCEの下に(1)カナダ最大の電話会社Bell Canada、(2)最近取得した国際通信事業者Teleglobe Inc.、(3)上述のメディア企業BCE Globemedia、(4)電子商取引サービスBCE Emergis(BCE 出資率65%)の四本柱を並べ、74%出資のBell Canada International、100%子会社のTelesat Canada、BCE Capital、Bimcor、CGI Group.Inc.(46%出資)などその他の投資額は(5)BCE Venturesで括っている。

 BCE EmergisはBCEが2000年8月に8,830万ドルで買収したソフトハウスInvoiceLinkを組み込んで電子商取引サービスを開発中で、主要な顧客としてマイクロソフト、Grand&Toy、J.P.Morgan Treasury Services Unitを獲得した。BCE EmergisのB.エドワーズCEOはJ.P.Morganの電子送り状システム(Electronic Invoice System)を運営することは金融機関約2,000社への道が開けたことに意義があるとしている。


顧問 高橋洋文(編集室宛:nl@icr.co.jp)

(最終更新:2001.2)

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