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世界の通信企業の戦略提携図(2000年11月24日現在)

49. BTも株価対策で事業を分割・再編成

 BTは2000年4月からビジネス・データ通信、インターネット、携帯電話、電話帳部門の分離・独立方針を発表・実施してきたが、固定通信の卸売・小売分離を加え、2000年11月9日に大規模な分割・再編成計画を発表した。
1. 持株会社
新たに持株会社BT Holdingsを設立し、子会社を統括する。

2. 新BT
以下の通りの事業分割後、新BTは国内固定通信サービスの小売部門となる。

3. ネットコ(NetCo)
国内固定通信サービス卸売部門で、将来株式の1/4を公開する。

4. BTイグナイト(Ignite)
企業ユーザに向けデータ転送・ウェブホスティング・カスタムeソフト・ アプリケーションパッケージを提供するブロードバンドIPビジネスで、2001年末に上場予定。欧州9カ国100都市を結ぶ光ファイバ網と英国・欧州9都市内光ファイバアクセス5万ルート粁を保有し、2000年9月から20データセンターを稼働中。2001年末までにはIPネットワークを16カ国250都市に拡大し、センターを44に増やす。欧州初のApplication Infrastructure Provider:AIPと称している。将来株式の1/4を公開。

5. BTオープンワールド(BTopenworld)
BTはBT InternetやBT Clickなどのアクセスサービス、ブランド名ジェニー(Genie)と言うモバイル・インターネットを提供中だが、オープンワールドはこうしたISP及びBSkyBと合弁でディジタルTVを提供する 事業 Openを一本化し、個人向けポータル/高速ネットアクセスを提供する。現在Genieの加入数は60万以上、ディジタルTV加入280万のうち双方向サービスOpentalkの 登録数60万だが、統合サービスの初期加入数は250万と見込む(国内2/3欧州 1/3)。

6. BTワイヤレス(BT Wireless)
英国第2位の携帯電話事業者BT Cellnet( 6月末加入数770万)、AT&T とのグローバルサービス合弁事業Abvanc Mobile・ドイツのViag Interkom・日本のJ-Phoneその他への投資など世界14カ国加入数総計1,800万のビジネスを統合する。2001年下半期に上場し、株式の1/4を公開する。

7. イェル(Yell)
BTの電話帳部門で、Yellow Book USAの買収により、英国・米国の職業別電話帳顧客4,000万名、広告出稿企業60万名を擁し、BTグループ売上高の3%を占める。広告ポータルYell.com、問合サービスTalking Pages、ダイレクトマーケティング向けTheBusiness Databaseなども提供し、インターネット顧客ベース築き経験を積んでいる。2001年3月に上場し1/4を公開する。

 今回の再編成は、年初来42%も下がった株価を引き上げることを意図したものだが、海外投資や3G免許費用で嵩んだ借入金300億ポンドを1年後に2/3に圧縮すると表明した にもかかわらず、株価は下がり続けている。問題はNetCo設立に関する規制をクリアするのに1年以上かかり、「今回の計画があまりにも複雑で、あまりにも遅く、抜本的でもない」との評価である。もともと成長株の携帯電話事業について収益性の高いビジネスユーザ中心の拡大戦略をとったVodafone と対蹠的に一般ユーザ獲得に注力し、M&A 戦略もデータ通信・IPネットに傾斜したC&Wと違って総花的でだったことが禍いしている。なお、P. ブロモフィールドBT 社長は、英国にはトラッキング・ストックは馴染まないので、一般の株式発行を行うとしている。
 借り減らしのための資産売却は、欧州と日本を残して以下のようなアジア投資から選定すると表明されている。

  1. 韓国の携帯電話会社LG telecom株式の24%
  2. 香港の新興固定/移動通信事業者SmartTone株式の20%
  3. シンガポールの新興固定/移動通信事業者Starhub株式の18%
  4. マレーシアの携帯電話会社Maxis Communications株式の33%
  5. インドの携帯電話会社Bharti株式の44%

50. AT&Tはリバティー・メディアを手放す方向

 AT&Tは2000年11月15日に、番組制作・供給部門リバティ・メディア・グループ(Liberty Mdia Group : LMG)を、税制上問題がなければ2001年春に分割( トラッキングストックを普通株にして独立)する考えを表明した。

 AT&Tは99年5月に合意したMSOメディア・ワン(Media One)440億ドル買収について2000年6月にFCC承認を得る際、(1)タイム・ワーナー・エンターテインメント(TWE)株式のうちMedia One持株25.5%の売却、(2)LMGの売却、(3)AT&TのCATV局の一部を売却し加入数を970万減らすこと、の3条件の一つを選択し2001年5月19日までに処理完了する条件を付され、その選択を2000年12月5日までに報告することになっていた。税制上の問題とは、99年3月に完了したTCI買収が免税だったため2001年3月以前に売却すると課税対象になるため、LMG売却と今回の4 分割決定の論理的基礎(rationale)が一致し非課税になると国税当局(Internal Revenue Service)を説得する課題を指す。TCI合併完了後2年経過すれば明白に非課税だが、それ以前だとグレイゾーンでIRSをクリアしなければならない。しかも、LMGについてはTCI時代に トラッキングストックが発行され、LMGとTCIの技術投資・海外事業統括事業TCI Ventureを統合して新しいLiberty Media Corporationが設けられ、それについてAT&Tが トラッキングストックを発行したため、経緯が複雑で解釈が面倒である。IRSの説得に時間がかかり、その間TWE株式に良い値がつけば売り、重ねてLMG分離を行うことも考えられる。

 J.マローンLM会長は「AT&Tの一員であることには常にプラスとマイナスがあったが、プラスがじきに大きくなり、マイナスは遅くやてきた」と語りつつ、R.マードックのNewsCorp.に出資して議決権のない社外筆頭株主になり、衛星資産を切り離して設立された衛星TV事業Sky Global Networksの株式約5%を取得するなど、LM独立を見越した提携戦略を始動している。  

51. フランステレコムのEquant買収、GlobalOneとの統合

 Concert、Infonet、Equant 、GlobalOne、C&W などのグローバル・サービス・プロバイダーは、これまで網管理機能つきグローバル・エンド・ツー・エンド・サービスに特化してきたが、伝統的国際キャリアーやGlobal Crossing、KPNQwestなどの新規参入キャリアーの追撃による競争激化に伴い、ネットワーキング・サービス(インフラ)とeコマース・サービス(アプリケーション)のいずれを中核能力(core competencies)とするか選択を迫られつつある。従来GlobalOneやInfonetがネットワーキングにを志向しConcert、Equant、C&W がeコマースに傾くと見られてきたところ、2000年11月20日にフランステレコム(FT)がGlobalOneとEquantの合併を発表した。

 Equantは、99年10月以来SITA/Equantの複合組織として(既報「No.2 SITAは組織再編成を決定」参照)、220カ国に展開するグローバル網により世界のトップ100企業の3/4を含む大規模ユーザ3,700社にグローバル通信サービスを提供してきた。2000年第3四半期の売上高は前年同期比+45%の約4億ドル、為替変動により3,100万ドルの損失を記録したが、2001年には約3億ドルの利益が見込まれ、時価総額は現在約60億ドルである。一方、GlobalOneはDT/FT/Sprint3社合弁グローバル網事業解体後FTの100%子会社になり(既報「No.20フランステレコム、グローバル・ワンを完全子会社化」参照)、2002年末収支均衡を目指し孤軍奮闘してきた企業。去る9月に北米28都市を結ぶディジタル網強化のため2億ドルを投資する計画を発表したところである。

 合併手続は、(1)Equantが新規発行8,060万株と引き換えにGlobalOneのビジネス・データ事業及び現金3億ドルを取得する(音声サービスとカード・ビジネスはFTに残される)、(2)FTはSITA財団のEquant持株54.3%をFT株式約6,800万株と引き換え(FT1株:Equant2.2株、プレミア+37%、約30億ドル相当)に取得する、(3)現行のEquant・SITAジョイントベンチャー協定を改め、Equant/GlobalOneがネットワーク資産と運営の全権を掌握し、SITAが航空業界にEquant/GlobalOneのサービスを販売して、Equant/GlobalOneに最低収入額を保証し、Equant/GlobalOneがSITAに一定の奨励金を支払うと言う協定を結ぶ、(4)FTはEquantが新しく発行する1,000万優先転換株と引き換えにEquant/GlobalOneに10億ドル投資する(転換株は5年後に1株100ドルの評価で普通株に転換する)、5()合併手続は規制当局の承認をを得て2001年第1四半期完了と期待され、新組織名と統一ブランドが第2 四半期に発表される 。

 Equant/GlobalOneの役員構成は、D. デルピン現Equant社長兼CEOが新組織の会長兼CEO、D. カクラン現GlobalOneCEOがCOO、J. オルキンス現EquantCFO(Chie Finamcial Officer)がCFOに就任する。

 Equant/GlobalOneのネットワークは世界220カ国に及び、145カ国で顧客サービスをサポートする。現行サービスは、IP転送サービス、フレームリレー、ATM、統合音声・ データ、ホスティング、専門サービスと多様で、将来はFT傘下のeビジネス部門と合同で高度サービスを開発・提供する。「Equantは何でもやって呉れる」と評されてきたEquantのきめ細かな顧客支援サービスの伝統とFTの豊かな伝送容量や投資資金が融合され、コスト引下げや新サービス開発のシナジー効果が発揮されるものと期待される。


顧問 高橋洋文(編集室宛:nl@icr.co.jp)

(最終更新:2000.12)

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