トップページ > トピックス[2000年] >

トピックス
海外情報

FCCが新通信法施行4年間の成果を発表

(2000.2)


 米国連邦通信委員会(FCC )は、1996年通信法施行4周年にあたる 2月 8日に "Telecommunications@the Millennium The Telecom Act Turns Four." という報告書を公表して、新通信法が施行されて以降4年間の成果を明らかにした。この日、ケナ−ド委員長はワシントンDCで行われたナショナル・プレス・クラブでの記念講演で、所見を述べるとともにこの報告書をリリースした。
(注)同委員長が講演で明らかにした「2000年の課題(agenda)」の核心は "ABCs" 、つまり「アクセス、ブロ−ドバンド、コンペティション」であった。

ケナ−ド委員長は、この報告書の発表にあたって、「今日、米国の電気通信の消費者は、より早い速度とより安い料金について、プロバイダーとサ−ビスの両方に、従来以上により多くのの選択肢を持っている。」とコメントしている。以下に、報告書のトピックスを紹介する。



料金の低下と需要の増加
  • 長距離料金は、1993年以降34% 値下がりした。住宅用利用者の国内長距離料金は、他の商品およびサ−ビスに比べ、1993年以降10% 値下がりした。
    (注)現在、一番安い国内長距離料金は 1分 5セントである(FCC 委員長の講演)。
  • 長距離通信のトラフィックは、1993年以降 42%増加した。
  • 国際通信料金は、1993年以降 50%以下に低下した。
    (注)1997年におけるAT&Tの日本向け国際通話の平均料金は 1分当たり47セントであったが、現在では16セントである(FCC 委員長の講演) 。
  • 携帯電話の料金は、1993年以降 40%低下した。サ−ビス・エリア内料金(local bill)は30ドル値下がり(1993年の70ドルから99年の40ドルへ)した。
  • インタ−ネットの利用者は、1996年には2,700 万人だったが、現在は8,000 万人に増加した。米国の世帯の40% 以上がインタ−ネットにアクセスしており、インタ−ネットのトラフィックは100 日毎に倍増している。米国におけるインタ−ネット経済の市場規模は6,330 億ドル(米国経済の 8% )で、雇用は480 万人である(FCC 委員長の講演)。

電気通信産業は積極的に投資し、技術革新を促進
  • 1999年における電気通信産業の通信網に対する投資額は、1996年通信法成立以前の年の投資額より約250 億ドル多い。
  • 1993年における米国内の光ファイバ−・システムは10万マイル以下だったのに対して、1999年には22.5万マイルとほぼ倍増している。
  • 海洋横断海底ケ−ブルの通信容量は、2001年までに1996年の約140 倍に増加すると見込まれる。
  • 新規参入事業者は新通信を構築している。CLEC(Competitive Local Exchange Carriers: ベル電話会社の競争相手) の投資は、1997年と99年の間で3 倍に増加した。
  • 新ワイヤレス事業者は全米規模のワイヤレス網を構築し、長距離通信料金やロ−ミング料金の不要な料金プランを導入した。
  • ケ−ブルテレビ事業者の投資額は、1995年に対し99年はほぼ倍増した。ケ−ブルテレビの多チャンネル化だけでなく高速インタ−ネット接続と電話サ−ビスを可能にするため、ケーブルシステムを高度・双方向システムへグレ−ドアップしている。ILEC(Incumbent Local Exchange Carriers: ベル電話会社) は、1990年代前半の投資額はフラットだったが、95年から98年の間に 16%増加した。
    (注)現在、ケ−ブルテレビ会社が提供する電話サ−ビスの利用者は13万であるが、2005年までには50% の米国の世帯はこのサ−ビスを受けられるようになる、とする予測もある(FCC 委員長の講演)。
  • 電気通信産業は、より革新的になりつつある。それを示す一つの尺度として、米国特許庁が承認した電気通信関係特許数は、1994年の3,744 件から98年は7,684 件に増加している。

競争こそドライビング・フォ−ス
  • 11994年には大多数の米国人は、携帯電話サ−ビスを 2社から選んでいた。現在では96% の米国人に3 社以上、75% は少なくとも 5社が競争でサ−ビスを提供している。
  • 地域競争事業者は、特にビジネス市場で成功している。この市場では、競争事業者が1999年第 3四半期に、新規回線の65% を獲得している。
  • ビデオ市場でも、衛星会社が新規の多チャンネル・マルチメディア・ビデオ加入者のうち 3件中 2件を獲得している。
  • 1995年には、ワイヤレスの音声通信分数は、全音声トラフィックの 1ないし2%のシェアを占めるに過ぎなかった。1999までに、ワイヤレスの音声通信トラフィックのシェアは7%となり、2000年末には10% を超えるとみられている。
    (注)米国の携帯電話加入数は、1993年に1,500 万だったが現在は8,000 万に増加した。日本における携帯電話発信の音声トラフィック(98年度発信ベ−ス、通話時間)のシェアは16.4% である。(郵政省 トラヒックからみた電話の利用状況 99.11.15 )

これらの結果、電気通信産業はブ−ムになった。
  • 1996年以降、電気通信産業は17万人の新規雇用を創り出し、570 億ドルの追加収益を生み出した。
  • 「デジタル・エコノミ−」は、我々のビジネスのやり方を変え、日常の生活を支え、インタ−ラクティブな関係を創る。商務省の調査によれば、情報技術(Information Technology:IT )産業(コンピュ−タ・ハ−ドウエアとソフトウエア、デ−タ・サ−ビス、および通信設備とサ−ビスの生産者)による1995年から98年までの実質経済成長率に対する寄与率は、年平均30% 以上である(注)。
  • デジタル時代の便益は、すべての米国人にまで及ぼうとしている。2006年までに、プライベ−ト・セクタ−の労働力の半分は、ITと密接に関連する産業に雇用されるだろう。
  • 1994年における公立の学校のインタ−ネット普及率は35% であったが、98年には89% と 3倍になった。
  • 1996年に法制化された「学校および図書館に関するユニバ−サル・サ−ビス・プログラム」(通称 Eレ−ト)は、学校と図書館、特に田舎および経済的に不利な地域における学校と図書館に、手頃な(affordable)料金で通信サ−ビスを提供した。
    (注)2月10日に発表された2000年大統領経済報告によると、95年から98年の4 年間における国内総生産の成長率に対するIT産業の寄与率は21〜31% と試算している。

グラフ

「ブロ−ドバンド・インタ−ネット時代」の幕開け
 FCC のケナ−ド委員長は来るべき「ブロ−ドバンド・インタ−ネット時代」について、講演のなかで以下のように語っている。

「米国の平均的なインタ−ネット利用者は、ウェブサイトからダウンロ−ドするのを待つために、 1年間に25時間を費やしている。また、ほとんどの米国人はインタ−ネットにアクセスするのに、一つのデバイス(デスクトップPC)しか使っていない。この状況が「ブロ−ドバンド・インタ−ネット時代」によって変わる。
 インタ−ネットはPC以外のデバイスでも利用され、我々の日常生活のより多くの局面、例えば携帯情報端末、自動車、そして家電製品にすら組み込まれるだろう。

 FCC の一つの大きな挑戦は、この移行のために電波の利用を促進することである。インタ−ネットにアクセスする無線デバイス(無線ラップトップ・コンピュ−タ、無線パ−ム・パイロットおよび多くの携帯電話機)を出来る限り増加させるため、FCC はより多くのの周波数を市場に提供しようとしているが、その理由がこれである。今春予定されているFCC による周波数の競売は、アナログ放送用の周波数をデジタル技術に移行させることによって、新無線サ−ビスに周波数を使えるようにするものである。

 私は、複数のブロ−ドバンド・プラットフォ−ムを有するネットワ−クのネットワ−クを想定しているが、これらが米国の家庭に、ケ−ブル、DSL 、無線、衛星、放送を含む多様なデジタル・サ−ビスのオプションを提供するだろう。
 すでに現在、170 万の顧客が標準モデムの25倍の速度でインタ−ネットにアクセスしているが、これはほんの始まりである。」

(取締役相談役 本間 雅雄)
e-mail:編集部宛>nl@icr.co.jp

(入稿:2000.2)

このページの最初へ
トップページ
(http://www.icr.co.jp/newsletter/)
トピックス[2000年]