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2011年6月2日掲載 |
通信事業者が主導で提供するネットワーク付加価値サービスについて考えてみたい。 2011年6月30日をもって、NTTドコモの「着もじ」サービスが終了する。読者の皆様は「着もじ」というサービスをご存知だろうか。2006年5月11日に発表された2006年夏モデルのシリーズ(902iS等が中心)から搭載された機能で、1メッセージ送信5.25円の従量制サービスとして提供開始した。 電話をかける際に10文字以内で、メッセージをテキスト(絵文字も使用可能)として挿入することができるサービスで、NTTドコモの「着もじ」サービス対応の携帯電話同士間のみで送信が可能である。(但しスマートフォンや一部の携帯電話では未対応。) NTTドコモの着もじ対応した携帯電話間でしか利用できないので、非対応の電話には「送信できませんでした」というメッセージが表示されて課金もされない。 初めてかける相手に自分の社名や名前、簡単な用件を着信とともにテキストで伝えることができ、着信時に相手の携帯電話にそのテキストが表示されるというコンセプトのサービスだ。2008年9月には月額52.5円で使い放題の定額制サービス「着もじ・ホーダイ」を提供してきたが、利用者数の減少によりサービスを終了することとなる。 2008年8月のマーケティングリサーチ調査会社アイシェアの調査によると、「着もじ」の利用経験については、
と、利用経験者はあわせて3.8%。
合計で52.9%が利用したことがなかった。 また同調査による認知度については、
年代別に見ると20代では32.4%とやや低いものの、30代では42.3%、40代では47.6%で、サービス開始後2年経った2008年でも認知度、利用度の低いサービスだった。(有効回答数240) このサービスを利用するには「着もじ」サービスに対応した携帯電話機とネットワーク側でのテキスト送信機能の設定が必要である。世界の通信事業者の中でも提供しているのは、NTTドコモとソフトバンクの「着デコ」くらいだろう。 ソフトバンクの「着デコ」サービスは、2008年6月に発表したソフトバンクの「着デコ」に対応した携帯電話(全てシャープ端末)同士間でしか利用できない同様のサービスだ。NTTドコモの「着もじ」に対抗してテキスト以外にも画像等も送付できるのが特徴だが、対応端末が少ないことや利用方法も「着もじ」より煩雑なことから頻繁に利用している人は少ないと推測する。2011年4月22日、同社は「着デコ」サービスを2011年9月30日で終了すると発表した。 これらのサービスは利用時に携帯端末側でテキスト挿入、送信、表示を設定させる必要がある。ネットワーク側では発信時に着信相手が「着もじ」対応端末であるかどうかを判断し、対応端末だった場合にはメッセージを設定した信号を送信し、着信側も「着もじ」対応だった場合はメッセージが画面表示される。その後発信者側にメッセージ送信通知および課金の生成がされる。「着もじ」非対応端末と判明した場合は、発信者に「送信できませんでした」というメッセージを送信するという仕組みだ。 「着もじ」サービスだが、実際に使ってみると結構便利な面もあった。 しかし、多くのユーザは電話する時にはすぐに電話してしまうから、いちいちテキストを入れたりしなかったのだろう。また最近では「着もじ」未対応のスマートフォンも急速に増加している。筆者自身もスマートフォンを使うようになってから利用しなくなってしまった。音声ARPUも低下しているから「着もじ」利用者もますます減少していると考える。さらに通信事業者が提供しているネットワークサービスであるため、同社の「着もじ」対応同士の端末間でしか利用できないというデメリットもある。 通信事業者が主導して携帯電話端末の仕様策定からネットワーク開発までを垂直統合的に実施している日本市場だから実現できたサービスの一つだといえる。 「着もじ」「着デコ」のサービス終了で、また一つ日本特有のネットワーク付加価値サービスが姿を消すことになる。利用者が少ないサービスが終了することは市場の原理から仕方がないことだ。今後、通信事業者として、新しい競争環境の中で顧客のニーズに適応し、自社のプレゼンス向上と収益に繋がる新たなサービス創出が求められてくる。通信事業者が主導となってどのような新たなネットワーク付加価値サービスを提供していくのか注目していきたい。またユーザの視点からも、通信事業者が提供するネットワーク付加価値サービスの利便性を改めて見直してみたい。 本情報は2011年5月31日現在のものである。 (参考URL:2011年5月31日現在) (参考)ガラパゴス現象とは? |
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