ストレスと上手に付き合うために
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InfoCom World Trend Report
2014年11月25日掲載

2014年10月号(No.307)

※この記事は、会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。
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現代社会は、多くの人がストレスを感じながら生活しているストレス社会であると言われている。厚生労働省が5年に1回実施している労働者健康状況調査によると、仕事や職業生活でストレスを感じている人は、1982年は50.6%であったが、2012年には60.9%へと増加している。年代別で見ると、2012年の調査では、20歳代58.2%、30歳代65.2%、40歳代64.6%、50歳代59.1%となっており、いわゆる働き盛りの世代にストレスを感じている人が多くなっている。
ストレスは、仕事や勉強、人間関係、健康、子育て、介護など日常生活における様々なことが要因となって生じると言われており、仕事や生活へのコンピュータの普及に伴う「テクノ不安症」や「テクノ依存症」といったテクノストレスの増加も問題視されている。

こうした中で、今年の6月には労働安全衛生法の一部改正が行われ、従業員50人以上の事業者に従業員のストレスチェックを実施することが義務付けられて、2015年12月までに施行されることとなっている。

ストレスへの対処法としては、スポーツや趣味での気分転換、睡眠、音楽鑑賞やペットとの生活によるリラックスなどがあげられるが、昨今、ストレスが生じているかを検知し、その解消を促すウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリなどが数多く登場している。

アイルランドのGalvanic社は、「PIP」というウェアラブルデバイスを指で摘まむことにより、皮膚の電流の流れやすさを通じてストレスのレベルを測定(ストレスレベルが高いと発汗して電流が流れやすくなる)し、これをタブレットやスマートフォン上に風景で表示するシステムを提供している。ストレスレベルが高い時は、風景は冬景色で、雪が降って地面や木々は凍っており、ストレスレベルが下がると、大地の氷が解け、青空がのぞいて春の景色に変わるという。

またスタンフォード大学の研究所メンバーが創業に携わったSpire社が開発したクリップ型のウェアラブルデバイス「Spire」は、ベルトや衣服に取り付けて、呼吸の早さや深さ、スムーズさなどをセンサーで捉え、そのデータをBluetoothでスマートフォンのアプリに送信するというものである。送られたデータから呼吸が乱れていると判断した場合、スマートフォンに「深呼吸をして下さい」などリラックスを促すコメントを表示し、呼吸が整うと「今、あなたは集中しています」などと表示されるそうだ。

今年のCEATEC JAPANでもいくつかの製品・技術が出展された。エプソンのリスト型と腕時計型の2種類があるウェアラブルデバイス「PULSENSE」は、フォトダイオードにより皮下の血流から脈拍を感知し、専用のアプリケーション「PULSENSE View」で脈拍、睡眠、「こころバランス」など6つのデータをわかりやすく表示・管理する。富士通は、スマートフォンなどのカメラで顔を5秒間撮影するだけで、顔の光を吸収する度合いの変化から脈拍を測定する技術を展示した。これは身体にデバイスを装着する必要がなく、パソコンやテレビにカメラを装着すれば、パソコンを使ったりテレビを見ているうちに脈拍がモニタリングされて、その変化からストレスや健康の管理ができるというものである。

このほか、「癒し」によりストレスを緩和するという観点でロボットが活用されている。多くのセンサーを働かせて人間の顔の表情や音声の周波数・アクセントなどのデータを収集し、人工知能を駆使して感情を認識することにより、呼びかけに反応したり愛らしい行動をとることで人間の心を和ませるというものだ。こうした癒し系のロボットは、「最もセラピー効果があるロボット」としてギネスブックにも認定された大和ハウス工業のアザラシ型ロボット「パロ」や、バンダイの人形型ロボット「プリモプエル」などが有名で、10年以上ものロングセラー商品となっている。プリモプエルの購入者の8割は30代以上の女性で、子育てを終えてやや喪失感を抱いているシニア層や一人暮らしの働く女性などによる購入が多いという。

現代社会において、ストレスを全く感じずに生活していくことは困難と言われており、少しでもストレスの発生を抑えたり、生じたストレスといかに上手に付き合っていくかがポイントとなっている。そうした観点からすると、前述のとおり、センサーや人工知能を駆使したデバイス・システムやロボットは、感じているストレスのレベルを検知したり、受けたストレスの解消を図るという点で有効なツールとなってきている。またICTの多様な技術を活用することにより、コミュニケーションを密にして良好な人間関係を構築したり、仕事・子育て・介護などの負担を軽減すれば、ストレスの要因の改善につながり発生を抑制することもできる。

このように、ストレスに対するICTの活用は、幅広い範囲で有効に機能する可能性を有していることから、一層の技術の高度化や価格の低廉化等を実現し、更なる活用の拡大が図られることを期待したい。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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