ホーム> InfoCom World Trend Report >
InfoCom World Trend Report
2014年11月25日掲載

2014年10月号(No.307)

※この記事は、会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。
[繝。繝シ繝ェ繝ウ繧ー繝ェ繧ケ繝育匳骭イ] [RSS] [TWITTER] [Facebook]

LINE株式会社は2014年10月9日、同社の事業戦略を発表するイベント「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」を開催。LINEが今後展開する新サービスを、プラットフォーム領域、エンターテインメント領域に分けて発表した。「LIFE」をテーマに、コミュニケーションプラットフォームから、LIFEプラットフォーム、エンターテインメントプラットフォームとして拡張することで、生活に密着したサービスを展開していくことが狙いだ。また、登録ユーザー数が世界5億6,000万人を突破したことや、新たに月間アクティブユーザー数(MAU)がグローバルで約1億7,000万人にのぼることなど、LINEの最新利用状況・実績も発表した。

LINEのリリースからそれぞれのサービスを見ていき、今回の新サービス戦略がLINEにとって、どうして重要なのか考えていきたい。

LIFEプラットフォーム領域 (1)
「LINE Pay」

公開予定:2014年冬頃
対象国 :日本/グローバル(クレジットカード連携のみ)

「LINE Pay」は、オンライン(PC、スマートフォン)・オフライン問わず、LINEおよびLINE関連サービス、提携している店舗やWebサービス・アプリ内における支払いをLINEアプリ(iPhone/Android)上から行うことができる決済システム。支払いは、クレジットカードとの連携のほか、コンビニエンスストアおよび提携銀行(みずほ銀行および三井住友銀行)の口座を通じて事前にチャージ(日本のみで対応)することにより、利用可能となる。LINEならではの特徴として、LINEでつながっている友人間で、決済した商品・サービスの購入費用を複数人で按分したり(「割り勘」機能)、相手の銀行口座を知らなくても友人のLINE Pay口座宛に送金したりすることが可能(「送金」機能)。また、送金されたお金は、銀行口座から引き出すこともできる(「出金」機能)。

なお、セキュリティシステムとして、(1)LINEとは別の2次認証パスワード、(2)Apple Touch IDによる指紋認証でのパスワード照会(iPhoneのみ)、(3)PCサイト利用時のスマートフォン認証の採用を予定している。これにより、安全・安心にユーザーが利用可能な決済機能を実現する。

公開は2014年冬を予定しており、まずはLINEおよび提携Webサービス・アプリでの決済利用を開始、今後順次、オフライン店舗などでの利用にも対応していく。

LIFEプラットフォーム領域 (2)
「LINE Taxi」

公開予定:2014年冬頃
東京限定版より順次公開 
対象国 :日本

「LINE TAXI」は、日本交通株式会社との提携により、LINEアプリ内、および、「LINE TAXI」専用公式アカウントから、いつでも、どこでもタクシーを呼ぶことができるサービスだ。GPSおよび建物情報の入力により、指定した場所に配車し、「LINE Pay」で支払いすることが可能。今冬に予定している東京限定版の先行リリース時には、日本交通が保有する約3,300台の車両が対象となる。その後予定している全国展開時には、日本交通が「全国タクシー配車」アプリを通じて提携するタクシー事業者123グループが保有する合計約22,000台が順次対象となる予定だ。今後は、世界中のタクシー会社と連携することで、このビジネスモデルを世界中へ広げていく模様である。

LIFEプラットフォーム領域 (3)
「LINE WOW」

公開予定:2014年秋
ソフトローンチ(渋谷区内)
対象国 :日本

「LINE WOW」は、韓国最大のフードデリバリーアプリ「Baedal Minjok」を展開するWoowa Brothers Corp.との共同出資により設立した新会社LINE Bros.株式会社による、LINE初のオンデマンドECサービスだ。第1弾は、「おざき(和食・麻布十番)」や「ア・ニュ(フレンチ・広尾)」など世界的に高い評価を得ている名店が、限定プレミアムランチを提供するフードデリバリーサービスを展開する。まずは、配達エリアを東京都渋谷区内に限定したソフトローンチとして展開し、今後は、対象のメニュー・店舗・エリア・配達時間などを順次拡大していくほか、将来的にはフードデリバリーで構築された配達網をインフラとし、フード領域に留まらず、様々な分野のデリバリーを行っていくことを目指す。

LINE WOW提供会社

(出所:公開情報を元に作成)

LIFEプラットフォーム領域 (4)
「LINE Maps for Indoor」

公開予定:2014年秋頃(Android限定)
対象国 :日本

「LINE Maps for Indoor」は、百貨店やショッピングセンターなどの商業施設内のナビゲーションに特化した地図アプリ。施設内で行きたいショップやレストランを指定すると、現在地から目的地までの最適なルートを地図で案内する。なお、営業時間や電話番号などの店舗情報も掲載し、施設内の店舗を調べたり、探したりする際にも利用できる。このサービスの公開はAndroid限定で2014年秋頃を予定しており、リリース時点には渋谷ヒカリエや東京ミッドタウンなど東京近郊の約40施設の屋内地図が利用可能になる。対応言語は、日本語・英語・中国語(簡体字、繁体字)・韓国語の5言語に対応し、海外から日本に来るインバウンド観光者などへのニーズにも広く対応する。

LIFEプラットフォーム領域 (5)
「LINE ビジネスコネクト パートナープログラム」

「LINE ビジネスコネクト」は、LINEのメッセージ送受信機能を企業向けにAPI経由で提供し、各企業が自社のCRM基盤としてLINEを活用することが可能になるサービスだ。ユーザーの同意のもと、企業の持つ既存のデータベースや、自社システムとユーザーのLINEアカウントを連携させることで、個別のユーザーごとに最適化されたメッセージ配信を実現し、顧客との接点の拡大を企業にもたらすものだ。「LINE ビジネスコネクト パートナープログラム」は、「LINE ビジネスコネクト」に対応したソリューションを提供する企業を公式パートナーとして、利用企業の開発負担の軽減や実施のスピード化を図り、「LINE ビジネスコネクト」導入を促進する取り組み。第1弾として9社を認定し、LINEからも積極的に開発・営業の支援を行っていく模様だ。

エンターテインメントプラットフォーム領域 (1)
「提供タイトルのラインナップ拡充」

LINEのゲーム配信プラットフォーム「LINE GAME」では、これまで「LINE:ディズニー ツムツム」「LINE レンジャー」などカジュアルゲームを中心に提供してきたが、今後、ミドルコア〜コアゲームも含めた、より多様性のあるラインアップを提供していくことで、グローバルプラットフォームとして更なる飛躍を目指す。

「LINE GAME」では、2014年秋以降、以下のタイトルを順次公開予定(五十音順)。

グリーとの共同出資、サイバーエージェントとの共同出資

(出所:公開情報を元に作成)

エンターテインメントプラットフォーム領域 (2)
「グリーおよびサイバーエージェントとの新会社設立」

グローバルで通用するコンテンツ開発のために、グリーおよびサイバーエージェントと、それぞれ共同出資による新会社設立に基本合意した。新会社設立を通じ、両パートナー企業と共に事業展開を一層加速させ、日本発の良質なゲームコンテンツを世界中のユーザーに提供していく、としている。設立する新会社では、ゲーム事業の連結子会社を9社保有するサイバーエージェントグループの潤沢な開発力およびゲーム開発ノウハウと、アジア地域を中心にLINEがグローバルで保有する豊富なユーザー基盤を組み合わせることにより、世界的に競争力のあるゲームコンテンツを開発・提供していく。開発したコンテンツは、LINEのゲーム配信プラットフォーム「LINE GAME」を通じてユーザーに提供する。なお、新会社および新規タイトルの詳細など今後決定する事項については、発表時点では未定となっている。新会社設立を通じ、両社の事業展開を一層加速させ、日本発の良質なゲームコンテンツを世界中のユーザーに提供していくことが期待される。

エンターテインメントプラットフォーム領域 (3)
「ゲームファンドを通じた株式会社トランスリミットへの出資」

日本国内のゲームコンテンツ開発会社およびゲームコンテンツへの投資を目的として設立したLINE Game Global Gateway 投資事業有限責任組合を通じて、株式会社トランスリミットへの出資実行について合意した。アメリカやアジア圏等を中心に、世界150カ国以上のユーザーに利用されている対戦型知的ゲーム「BrainWars」など、グローバルでの実績を持つトランスリミットの開発力と、LINEがグローバルで保有する豊富なユーザー基盤を活かした、新たなゲームコンテンツの開発に着手していく。「LINE GAME」では、これらの取り組みを通じ、外部コンテンツプロバイダーとのパートナーシップを強化することで、日本発の世界で通用するコンテンツを創出し、世界NO.1のモバイルゲームプラットフォームを目指す。

LINE Game Global Gateway

(出所:公開情報を元に作成)

エンターテインメントプラットフォーム領域 (4)
「LINE MUSIC」

公開予定:2014年内 
対象国 :日本

「LINE MUSIC」は、エイベックス・デジタル(ADG)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)、およびLINEが基本合意書を締結した、三社共同出資による新会社LINE MUSIC株式会社(仮称)にて展開予定のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービス。年内のリリースを目指し、「LINE MUSIC」の立ち上げに向けて、三社を中心に具体的な協議を進めていく。設立する新会社では、ADGおよびSMEの持つ魅力あるコンテンツや豊富な音楽サービスの展開実績、LINEが持つ全世界でのユーザー基盤やスマートフォンサービスの開発・運営経験など、各社が持つ経営資源を新会社で活用することにより、ユーザーと音楽コンテンツの接点を創出し、スマートフォン時代における新たな音楽の楽しみ方を提案し、音楽市場の更なる発展と活性化を目指して取り組んでいく。

三社共同出資による新会社

(出所:公開情報を元に作成)

エンターテインメントプラットフォーム領域 (5)
「LINE公式ブログ」

公開予定:11月4日
対象国 :日本

「LINE公式ブログ」は、アーティストやタレントなどの著名人が参加することのできるブログサービス。アーティストやタレントは、「LINE公式ブログ」を開設することにより、一般的なブログサービスと同様に広く情報発信ができるだけでなく、LINE公式アカウント、LINE MALL、LINE PLAYなど、LINEの周辺サービスと連携することで、LINEのプラットフォーム上で広くプロモーションやマーチャンダイジング(物品販売)を行う機会を得ることができる。今後、参加者の枠を拡大していく予定。

エンターテインメントプラットフォーム領域 (6)
「LINE有料公式アカウント」

公開予定:2014年内
対象国:日本

「LINE有料公式アカウント」は、アーティストやタレントなどの著名人が、当該公式アカウントの購読者を対象に、限定した情報の配信を行うことのできるサービス。LINE内の幅広いユーザーを対象に情報発信をすることができる従来の公式アカウントに比べ、よりコアなファンに向けて深い情報を提供していくことで、ファンクラブ組織として活用することができる。課金手法として、「LINE Pay」との連携を予定している。

エンターテインメントプラットフォーム領域 (7)
「LINE マンガ」の世界展開

公開予定:2014年年内予定、
提供言語:英語・中国語(繁体字)(スタート時)

2013年4月にリリースした電子コミックサービス「LINE マンガ」の世界展開を発表。講談社、小学館、メディアドゥの3社とともに新会社「LINE Book Distribution」を設立し、日本のコンテンツを海外向けに積極展開していくことを明かした。LINE マンガのダウンロード数は800万を超えており、8万5,000ものタイトルをラインアップしている。

4社による合弁事業会社

(出所:公開情報を元に作成)

LINEの利用状況:MAUは1億7,000万人

LINEの現在の登録ユーザー数は世界で5億6,000万人を突破し、主にASEANや南米でユーザーが増えていることを発表した。日本5,400万人、タイ3,300万人、インドネシア3,000万人、スペイン1,800万人、台湾1,700万人である。

また月間アクティブユーザー数(MAU)は1億7,000万人であることを公表した。LINEがMAUを発表したのは、これが初めて。MAUを公開した理由として、スマートフォンの買い替えやLINE@の一般開放などで、1人で複数のアカウントを持つ機会が多くなるためとしている。

重要なのはいかに利用者にお金を使わせるか。
グローバルに拡大できるか

メッセンジャーアプリにとって重要なのは、登録ユーザー数でなくMAUである。現在のメッセンジャーアプリはほとんどが無料であり、1人で複数のアプリをダウンロード可能であるため、1人が複数のアプリを相手に応じて使い分けている。日本でこそメッセンジャーアプリはLINEが主流であるが、海外ではLINE、WhatsApp、WeChatの併用をしている人が多い。実際、WhatsAppやWeChatが公表しているMAUの方がLINEのそれよりも遥かに多い。さらに、もっと重要なのは、MAUのうち、どのくらいの人が課金サービスを利用してくれているか、つまりお金を落としてくれるか、である。メッセンジャーアプリの多くはアプリ間では無料通話とテキスト、写真などのやり取りが可能であるが、それらは無料であることがウリであり、提供元にとっては収益にならない。むしろ利用者が増えれば増えるほど、サーバーやシステム、顧客管理の費用も増加して、負担になってしまう。いかに利用者を惹きつけておき、さらに彼らにお金を使ってもらうかがメッセンジャーアプリサービスの維持と成長のカギになる。メッセンジャーアプリの基本機能のみでは、もはやビジネスにはならない。今回LINEが新たな提供していくサービスは、新たな収益として期待されることだろう。そのためには、プラットフォームとなる利用者基盤が重要になってくる。現在のLINEが強いエリアは日本の他、タイ、インドネシアであるが、このような新興国ではスマートフォンや携帯電話で課金をしてコンテンツを購入するという習慣があまりない。また、LINEが提供している課金の代表であるゲームはオンラインに接続していることを前提として開発されたゲームであるが、海外では日本のように「いつでも、どこでも常時接続」ではない。ゲームや動画、音楽を楽しみたい時には無料(または安価)のWi-Fiスポットなどに行って、それらをダウンロードして楽しむことが多い。そのように携帯電話の市場環境も日本とは異なる。

また、そもそも携帯電話で課金されてコンテンツを購入することが日常的なのは、日本とアメリカなど、世界では限られた国しかない。日本ではフィーチャーフォンの時代から、i-modeサービスなどに代表されるように携帯電話でコンテンツを購入することが日常生活の中に入り込んでいた。ところが新興国を中心とした海外ではそのような習慣がない。今回のLINEのサービスもほとんどが日本国内向けである。一方で、LINEの利用者は日本国内にとどまらず、その大半が海外での利用者である。これからLINEは日本で稼いだお金(収益)を海外での投資に使っていくことになるのだろうか。

LINEは上場をすると言われていたが、それを見送った。正しい選択だっただろう。メッセンジャーアプリの他にもゲームやスタンプなど様々なサービスを提供していたが、利用者からすると、LINEである必要は特にないのである。つまりWhatsAppでもいいし、WeChatでもよいのだ。日本でこそ、LINEが圧倒的なシェアを誇っているが、メッセンジャーアプリは基本的にどれでも同じである。ゲームやスタンプで差別化していても、それも一瞬である。日本人は特に、新しいものに飛びついていく傾向がある。かつてソーシャルメディアはmixiが日本での主流だったが、Facebookが登場すると、あっという間にFacebookを利用してmixiはソーシャルメディアとしての役割を終えて、現在ではゲームが彼らの稼ぎ頭である。このように、日本だけでなく世界中の利用者は移ろい易い。新しくて、良いものがあれば、あっという間にそちらのサービスに行ってしまい、戻ってこない。いかにしてユーザーを惹きつけておくかが、重要になる。今回LINEが提供してくるサービスはいかに国内外の利用者を引き留め、さらにLINEにとって新たな収益となるかという点で、非常に重要である。

今回の新たな収益確保に向けたサービスのグローバルでの成否が今後の上場を左右することになるだろう。

主要メッセンジャーアプリの登録ユーザー数とMAUなど

主要メッセンジャーアプリの登録ユーザー数とMAUなど

(出所:公開情報を元に作成)

※本情報は2014年10月10日時点の情報である。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

「InfoCom World Trend Report」年間購読のご案内
(サービス概要、サンプル請求等の方はこちら)
このエントリーをはてなブックマークに追加

「サービス関連」レポート一覧

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。