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InfoCom World Trend Report
2014年9月30日掲載

2014年8月号(No.305)

※この記事は、会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。
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「Her 世界でひとつの彼女」を見た。2014年のアカデミー脚本賞受賞作である。舞台は近未来のロサンゼルス。主人公は、青春をともに過ごした妻と破局を迎え、私生活に少し行き詰まっている。このちょっとさえない男が、サマンサと名乗る高度な人工知能(AI)機能を持つ新型OSに惹かれていく。ホアキン・フェニックスが、微妙な感じの主人公を上手に演じている。

人工知能サマンサの声は、スカーレット・ヨハンソン。この美人女優はこんな声だったのかと、正直驚いた。決してきれいとはいえない、しわがれ声が印象的だ。今まで、字幕に気をとられていたのか、容姿に見とれて声まで気が回らなかったのか。この映画を見た後は、むしろ声ばかりがに気になる。

どこかで聞いたような話だと思っていたが、映画の途中で思い出した。小学生の頃に読んだ、星新一の『オフィスの妖精』(『未来いそっぷ』新潮社、1971年)だ。社員のモチベーションを上げるために新型ワークステーションがオフィスに導入される。これがゾクゾクするような女性の声で、仕事のサポートをしてくれる。このワークステーションと一緒にいることが、何よりも大切に思えてくる。確かそんな話だったと思い、思わず電子書籍で買って読み直してしまった。

コンピュータが人間並みの知性を持った存在になり得ているかどうか。これを判断する基準としては、チューリングテストがある。簡単にいえば、相手が人間かコンピュータかどうか分からないチャットのような環境で、人間と区別できないような反応ができれば、そのコンピュータは人間並みの知性を持っていると評価できるという考え方である。批判もあるが、この基準を満たせば「人間のような知性を持っているように見える」のは間違いない。完全にクリアするコンピュータはまだ存在しないといわれているが、サマンサはこれを軽くパスしている。

人間の行動は必ずしも論理的ではない、人間のような反応、人間のような認識は、本来コンピュータが得意とする演繹的な処理だけで実現することは難しい。大量の情報から適切と思われる答えを類推して利用する帰納的な方法が有効だと考えられている。AI技術の開発においても、帰納的なアプローチのウエイトが高くなってきている。例えば、人間のおしゃべりの相手をしてくれるJabberwackyというプログラムは、膨大な会話の情報を蓄積することで進化し、時としてかなり人間らしい反応をする。SNSで自動的に発言をするBOTにも、そうした機能を持つものがあるようだ。2014年5月には、ソフトバンクがロボット事業に参入するといって注目されたが、このロボットpepper(ペッパー)は経験や知識をネットワーク経由で共有して進化し、将来的には「感情を与える」ことを目指すという。ロボットと言うよりもクラウド技術を駆使したAIという方が正しいのだろう。

星新一のショートショートを読んだ頃、遠い先のことと思いつつも、いつかは知性を持ったコンピュータが現れるのだろうと思った。近年、コンピュータの「知性」は、情報技術の進化で加速度的に進化している。近い将来、人間並みの知性を実現することができるのか、どこまで行っても人間との差は埋められないのか。もしかしたら、コンピュータと恋愛する人が出てくる日も、遠くないのかも知れない。

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