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InfoCom World Trend Report
2014年8月26日掲載

2014年7月号(No.304)

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Googleは2014年7月1日、無料音楽配信サービスを提供しているアメリカのSongzaを買収したと発表した。買収金額などの条件については明らかにしていない。Songzaは2007年に設立された非公開企業。同社の登録ユーザー数は約550万人であり、最大手Pandoraが約7,500万、Spotifyが約4,000万人以上であることを見ると、決して大きな規模ではない。Google以外にも2014年5月にはAppleがBeatsを買収、6月にはAmazonが「Prime Music」の提供を開始した。音楽ストリーミングサービスをめぐってOTTが火花を散らしている。

Google、音楽ストリーミング事業の強化

Songzaは、現在、アメリカとカナダでのみ利用可能で、専門家が状況に合った曲を選んでプレイリストを作成し、ユーザーに最適な音楽のストリーミング配信を行っている。ユーザーは「Concierge」(コンシェルジュ)機能を使って、多数のプレイリストライブラリーの中から、アクティビティ、時代、雰囲気など条件に応じて簡単に音楽を見つけることが可能。またお気に入りのプレイリストをFacebookやTwitterといったソーシャルメディア、またはメールで友人らと共有することもできる。AndroidおよびiOS向けアプリを提供している。月額3.99ドルの有料サービス(広告なし)も提供している。

GoogleはSongzaのプレイリスト機能をGoogle Play Musicに統合する計画である。さらに、Googleの配下にあるYouTubeやその他のサービスでもSongzaの技術を採用することを検討しているという。

Google以外にもAppleやAmazonも同様に音楽ストリーミングサービスの強化に向けた取組みを行っている。

Apple、ヘッドホンメーカー Beats Electronicsを買収

2014年5月、サブスクリプション型ストリーミングサービス「Beats Music」の提供を行っているヘッドホンメーカーBeats Electronicsを30億ドルで買収することで合意した。これはApple史上最大の買収である。Beats Musicでは年会費99.99ドルで、2,000万曲以上の楽曲を聴ける。AppleのCEO、Tim Cook氏はプレスリリースの中で「音楽は私たちの生活すべてのとても重要な部分であり、Appleでは音楽は私たちの心の中に特別な場所を持っています。だからこそ私たちは音楽に投資し続けてきたわけですが、今後も世界で最も革新的な音楽に関連した製品とサービスを作り続けていけるよう、このたび、これらの素晴らしいチームを招き入れることになりました」とコメントした。Appleでは「iTunes Radio」、楽曲購入に加えて、サブスクリプションサービスを提供できるようになる。Appleのインターネットソフトウェアおよびサービス担当シニアバイスプレジデント、Eddie Cue氏はプレスリリースの中で「音楽はAppleのDNAのとても重要な部分であり、それはこれからも変わる事はありません。

Beatsが加わることで、iTunes Radioでの無料の音楽ストリーミングからBeatsでの世界クラスの会員制サービス、そしてもちろん、何年にもわたりお客様に愛されてきたiTunes Storeでの音楽ダウンロードに至るまで、私たちの音楽ラインナップはさらに素晴らしいものになるでしょう」と述べた。買収は関係当局の認可を得たのち、会計年度の第4四半期末(2014年9月末)にも完了する見込み。

Amazon、音楽ストリーミングサービス「Prime Music」提供開始

2014年6月12日、Amazonはアメリカの有料サービス「Amazon Prime」会員向けに、無料音楽ストリーミングサービス「Prime Music」の提供を開始したと発表した。Amazon Primeでは映画やテレビ番組などのコンテンツを無料でストリーミングできる「Prime Instant Video」やKindle書籍を無料で読める「Kindle Owners’ Lending Library」などを提供しており、音楽を追加することで会員の囲い込みを強化する狙いだろう。Amazonは2014年3月、Primeの年会費を79ドルから99ドルに値上げしている。Prime Musicでは、Amazonがキュレーションした100以上のプレイリストが用意されており、100万曲以上の楽曲を聴ける。

Amazonではこれまで「Amazon Cloud Player」という名称で提供してきたアプリの名称を「Amazon Music」に変更した。Prime会員はこのアプリでも「Prime Music」のサービスを利用できる。

日本以外で増加するデジタル音楽市場とサブスクリプションサービス

2014年3月、国際レコード産業連盟 (IFPI)が2013年のデジタル音楽の動向をまとめたレポート「DIGITAL MUSIC REPORT」を発表した。各国の音楽業界の売上、サービス別でのデジタル音楽の売上、音楽ストリーミングなどのトレンドをまとめている。レポートによれば、2013年の世界の音楽産業の売上は前年156億ドルから3.9%減少し、150億ドル(約1兆5,240億円)だった。なお、減少の大きな原因は、日本市場の売上が16.7%減少したことである。一方で、アメリカでの音楽売上は前年比48億7,000万ドルから0.5%増加し、48億9000万ドルだった。ヨーロッパの音楽産業では売上が前年比0.6%増加となる53億8,000万ドルで12年ぶりのプラス成長を記録、主要6カ国であるイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデンすべての国が売上増加を達成した。中南米の音楽産業の売上は前年の5億1,400万ドルから1.4%増加し、5億2,100万ドルだった。つまり日本以外の主要市場では、デジタル音楽は若干であるが増加している。

また、Spotifyなどの定額制(サブスクリプション型)を含む音楽ストリーミングサービスの売上は、全世界で前年比51.3%増加し、初めて10億ドルを突破した。音楽ストリーミングサービスの売上はデジタル音楽売上で、2011年時は14%だったが、2013年には27%を占めるまで急成長している。定額制音楽サービスおよびYouTubeなどの広告型音楽サービスの売上は前年56億3,000万ドルから4.3%増加し、58億7,000万ドルだった。定額制音楽サービスの有料会員数は全世界で2010年には800万人、2011年1,300万人、2012年2,000万人で、2013年には2,800万人以上と急成長している。

急成長の音楽ストリーミング

2014年7月、調査会社Nielsenは2014年上半期の音楽市場レポートを発表した。特にストリーミングは対前年同期(上半期)比42%増で、2014年上半期には702億曲以上がストリーミング再生された。但し、デジタル楽曲のダウンロードは13%減少の5億9,360万曲、アルバムのダウンロードは11.6%ダウンして5,380万枚だった。

従来YouTubeの音楽ビデオのような動画ストリーミングの主要チャンネルだったが、Spotifyなどのオンデマンド・オーディオ・ストリーミングの登場で、音楽ストリーミングの成長は50%以上となり、動画の35.2%を大きく上回った。音楽ストリーミングに関してオーディオ(音楽)とビデオ(動画)がほぼ同規模となり、2014年上半期にはオーディオが336億5,350万曲、ビデオが366億4,170万曲ストリーミングされた。

(表1)オンデマンド・ストリーミングの状況(2014年上半期)

(表1)オンデマンド・ストリーミングの状況(2014年上半期)

(出典:Nielsen資料を元に作成)

これからも世界規模で期待される音楽
ストリーミング市場と減少するCD販売

Appleは従来から音楽サービスに注力していた。近年ではPandoraやSpotifyなどが有名である。そしてここに来てAmazon、Apple、Googleも本腰を入れ始めた。音楽のサービス提供スタイルはストリーミングが主流になってくることは間違いない。これらのサービスはネット上のストアなどを通じて、スマートフォンやタブレットで視聴するようになる。

コモディティ化されたデバイスを利用し、インターネット経由で配信される音楽ストリーミングサービスを聴くというスタイルが定着しつつある現在、CDの将来は明るくない。今後もますます世界中でCDの販売は減少していくだろう。特に日本では1990年代後半からCDの売上金額が減少しており、それを「CD不況」と呼ばれている。国によって多少の差はあるものの、世界的に1997年〜98年をピークとして減少傾向にある。

2014年6月、オリコンは「オリコン2014年2014年6月、オリコンは「オリコン2014年上半期ランキング」を発表した。それによると、AKB48が史上初のシングルTOP3を独占した。アルバムでも最新作『次の足跡』が1位となり、シングル・アルバム両部門を制覇。期間中、音楽ソフト(シングル+アルバム+ミュージックDVD+ミュージックBlu-ray Disc)の売上高が最も高かったアーティストに贈られる「アーティスト別トータルセールス」でも最高の92.8億円を記録して1位となり、3冠に輝いた。史上初のTOP3独占となったシングルでは「ラブラドール・レトリバー」(2014年5月発売)が176.4万枚、「前しか向かねえ」(2014年2月発売)が115.1万枚、「鈴懸なんちゃら(略称)」(2013年12月発売)が108.6万枚。この売上枚数のほとんどは付随する「握手券」を求めるために1人で複数枚のCDを購入しているファンに依拠している。とはいえ、この販売手法が功を奏して、上半期3作のミリオンは1995年のTRF以来19年ぶりで、歴代最多タイ記録となった。この販売手法については様々な意見もあるだろうが、CD販売減少を止めたいと思う世界中の音楽会社は注目していることは間違いない。

Amazon、Apple、GoogleというOTT3強が本格的に音楽ストリーミングサービスの提供に本腰を入れ始めた。これから音楽ストリーミング提供をめぐっての争いはますます激しくなっていくだろう。そのような中でCD生産はどのようになっていくのだろうか。こちらも重ねて注目である。

(表2)アメリカの主要な音楽ストリーミングサービス

(表2)アメリカの主要な音楽ストリーミングサービス

(出典:公開情報を元に作成)

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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