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InfoCom World Trend Report
2014年7月24日掲載

2014年6月号(No.303)

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子供の頃、休日になると父の囲碁友達が家におしかけて朝から晩までタバコの煙がもうもうと漂う部屋の中、父の膝の上に座りながら見よう見まねで碁を打っていたらしい。ものごころついてからは、仕事柄もあって、人工知能への興味からコンピュータ囲碁を横目でにらんできたのだが、最近、グロービスの堀学長(日本棋院理事)が「囲碁とビジネスの類似性」を取り上げ、「ビジネスマンもぜひ囲碁を」と提唱していていることに刺激を受け、再び囲碁への興味がわいてきた。

考えてみると、確かに囲碁とビジネスには共通する特徴が多々ある。「(1)大局観」、「(2)形勢次第で打ち手に変化」、「(3)定石はあるが正解はない」、の3つが象徴的だろう。

経営戦略や事業戦略を考える際には環境変化や3Cを考えつつ策定するのが通常だが、19路盤の全体を俯瞰しつつ、広い目をもってバランスをみつつフォーカスする力((1)大局観)が欠かせない。局地線を戦ってこだわるがあまり、小さな地はとった(あるいは石をあげた)のはいいけれど、全体からみたらいつのまにか形成不利に陥っていたというのは、ビジネスの世界でもよく見聞きする話である。

一度立てた戦略やアクションプランであっても、環境変化や市場の変化がおこればスピード感をもってアクションプランや実行にあたっての順序を修正する((2)形勢次第で打ち手を変える)、場合によっては戦略自体の見直し((1)大局観)にも取り組む必要がある。

また、世の中にはベスト・プラクティスと呼ばれるモデルがあったとしても、それはその企業固有の取り巻く環境や資源、競争優位性があって成り立っているのであって、ところ変われば品変わる((3)定石はあるが正解はない)ため、結局自分でさまざまな要因を考え抜いたうえで、多くの取りえるオプションの中から、その場にもっともふさわしいと思われる正解に近い案を選択することになるわけである(さらに面白いのは、(4)意思決定者は人間であり、それ故に間違うこともあるという「人間らしさ」があるというあたりも類似点であろうか)。

この(1)から(3)の特徴が19×19という広い碁盤の上で連続的に展開されるが故に、今現在においてはコンピュータ囲碁がプロ棋士に勝てないわけである(勿論、囲碁もゲームの一種であるから、いつかは全シナリオシュミレーションを可能とする画期的な手法や高速CPUが開発されるかもしれないが)。同様に企業経営においても広大な市場の上で展開され、正解のないオプションの中から意思決定を行うプロフェッショナルが必要となると解釈することもできるわけである。こういうアナロジーを考えつつ、「よし、趣味と実益を兼ね、囲碁に再挑戦して幅を広げてみるか」と思い立ったところである。

さて、私事となりますが、このコラムを読んでいただく頃に弊社を退任することとなります。4年間にわたりお読みいただいたこと、紙面をお借りして御礼申し上げます。またどこかでお会いする時には、囲碁と経営のセンスが磨かれているとよいのですが(笑)。Good Day! ごきげんよう!

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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