2013年12月25日掲載

2013年11月号(通巻296号)

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コラム〜ICT雑感〜

東京五輪とICTの課題

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9月のIOC委員会で2020年のオリンピック・パラリンピックが56年ぶりに東京開催が決まりました。もう一度、目の当たりにオリンピックを観ることできるということで元気づけられた中高年の方々も多いと思います。

東京招致が決まって以降、新国立競技場建設問題をはじめ各競技会場や選手村の建設、道路、地下鉄などインフラ整備、実施に向けた体制作り、経済波及効果などの話題が連日のように報じられるようになっています。

また、関連する各省庁も予算確保に向けた動きが始まっています。通信インフラやICTの利活用については箱モノなどに較べ、目に見えにくいため話題に上ることが少ないように思います。しかし、通信インフラは五輪を成功させるインフラとしてその重要性は益々高まっており、十分な準備を行うことが求められます。ここでは昨年開催されたロンドン五輪における通信インフラ、ICTの取り組みを振り返りながら今後の課題について考えてみたいと思います。

ロンドンオリンピックにおけるICT

昨年のロンドンオリンピックが「ソーシャル五輪」と称されたようにコミュニケーションの手段としてツイッタ―やフェイスブックなどいわゆるSNS(ソーシャルネットワークキングサービス)が多く使われました。技術革新の激しいICT分野において7年先を見通すことは極めて困難ですが、いずれにしても4K/8Kなどの高精細の映像サービスを始め膨大な通信トラフィックが発生することは間違いありません。また、その膨大なトラフィックを支障なく捌き、利用者にいかにスムーズなサービスを提供できるかが五輪成功の一つの大きな鍵になると思います。

ロンドン五輪ではBT(ブリティッシュ・テレコム)が五輪パートナーに選ばれ通信インフラ整備と運用を一元的に行いました。BTの通信インフラの責任者によると先ず重要なのはオリンピック開催期間中、どれ位の通信トラフィックが発生するかを予測し、それに見合う通信インフラを準備することであったと言われています。2008年の北京五輪の約7倍のトラフィック予測を立て、トラフィックに対応する一つの手段としてオリンピック会場内外を含めてロンドン市内に50万のWi−Fiスポットを設置しました。

現在、日本でもWi−Fiスポットの設置が急速に進んでいますが、海外からのビジネスマン、観光客には必ずしも使い勝手が良くないという評判です。今後、公共の場所での簡便なアクセスが可能なWi−Fi設置を進めることが大きな課題の一つです。

また、懸念されるのはサイバー攻撃の問題です。オリンピックなどのビッグイベントはハッカー達による格好の標的になります。現在、日本の官公庁、企業などもサイバー攻撃の被害を受けています。サイバー・セキュリティは攻撃と防御のイタチごっこになりますが、人材育成・体制整備を含め今から本腰を入れて取り組む必要があります。

パラリンピックへの取り組み

今回の招致プレゼンテーションでパラリンピック女子陸上の佐藤選手のスピーチが注目を浴びました。パラリンピックも回を重ねるごとに参加国、参加選手の数が増えており、ロンドンパラリンピックでは164カ国、4,310人の選手の参加がありました。東京パラリンピックではその数が更に増えるものと予想されることからバリア・フリーに向けた取り組みも重要になります。

五輪については準備もさることながら、設備など五輪後の利活用を見据えた取り組みが重要です。その意味ではパラリンピックは超高齢化社会を迎える日本が抱える社会的問題解決の一つのきっかけになる可能性があります。パラリンピックでのICT利活用技術の発展が高齢化によるハンディキャップを抱えた高齢者へのサポートになる可能性を秘めていますし、将来、同じ問題を抱える中国・韓国などへビジネスベースでのグローバル展開が考えられます。

ウェアラブル技術に注目

五輪は新しい技術・イノベーションのトライアルの格好の場所にもなります。先ず考えられるのは携帯端末による自動翻訳の更なる進化です。ドコモの「はなして翻訳」を利用してみましたが、中国語の認識は発音が難しいこともあり、今一歩の感があるものの、英語の認識率はかなり高く、今後十分実用が期待できそうです。五輪で訪れる選手や観光客に十分、母国語での「お・も・て・な・し」を届けることが可能と思われます。

また、通信端末としてはタブレット、スマートフォンが急速に世界中で普及しており、次の通信端末がどうなるかが注目されています。今後、有望視されているものにウェアラブル端末があります。既にグーグルが眼鏡型のグーグルグラスを公表しており、2014年中にも販売されるのではないかみられています。また、その他のウェアラブル端末として、日本でも腕時計型の端末が売りだされています。

今後、これらのウェアラブル端末が極小・軽量化し、タブレット、スマートフォンと連動して多彩なアプリケーションを提供することにより、五輪会場の多くでライブの競技を観戦しながら、同時進行する五輪競技を見逃すことなく楽しめるようになる可能性があります。

いずれにしても通信インフラの整備、ICT利活用がどうなるかは来年のソチ冬季五輪、2016年のリオ五輪、2018年の韓国平昌冬季五輪の動向も参考にしながら検討を進めて行く必要があると思われます。

グローバル研究グループ 常務取締役 真崎 秀介

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