2012年12月号（通巻285号）

■地域・組織横断的なデジタル部門の新設により新たな成長戦略を描く西テレフォニカ

世界有数のグローバル通信事業者であるスペインのテレフォニカは2011年9月、大規模な組織改編の実施を発表した。縮小傾向の続くスペイン部門が欧州部門に統合されるなどの変更が行われたなか、目玉となったのがデジタル部門「テレフォニカ・デジタル」の設置である。同部門は25カ国に3億超の顧客を抱えるテレフォニカ・グループ全体のデジタル分野におけるイノベーションを俯瞰し、地域・組織横断的に新ビジネスの創出を推進していく単一の組織である。テレフォニカ・デジタルの設置から1年余が経過したが、テレフォニカは同部門をフル活用して多種多様な新サービスの導入に邁進している。本稿では、テレフォニカ・デジタルをイノベーションの発信源として新たな成長戦略を描くテレフォニカの取り組みについて解説する。

■新たなモバイルOS「Sailfish OS」は今後どうやって戦っていくのか？

フィンランドのモバイルOSメーカー、Jolla（ヨラ）が、同社で開発を進めている「Sailfish OS」を一部公開した。Jolla？OS？なんだろう？と思う人も多いだろう。フィンランドと聞いたら、モバイル業界で勘の働く人はフィンランドだからNokiaかな？と思うかもしれない。その通りである。JollaはNokiaで「MeeGo OS」の開発に携わっていた元Nokia社員らが2012年7月に立ち上げたベンチャー企業である。現在世界のスマートフォンOS市場はAndroid OSの独占に近い。ここに来て新たなモバイルOSが登場するが、どういう方向を目指しているのだろうか考察していく。

■アジアにおけるモバイルOSの現状〜エコシステムの拡充が成功の鍵

世界のスマートフォン（以下、スマホ）のオペレーティング・システム（以下、OS）市場は現在、アップルのiOSとグーグルのAndroidが席巻している（図1）。韓国のサムスンやLG、台湾のHTC、中国のZTEや華為、日本のソニーモバイルコミュニケーションズなど、アジアのほとんどの携帯端末メーカーがオープンソースのAndroid OSを採用している。だが、アップル対サムスンの熾烈な特許訴訟に伴い、これら携帯端末メーカーは自社も特許訴訟に巻き込まれ、Androidを無料または低コストで使用できなくなることを恐れている。また、グーグルとマイクロソフト（以下、MS）が自社ブランドのスマホやタブレットを相次いで発売。これにより、ソフトウェアベンダーとハードウェアベンダーと間に存在していた共存共栄関係が崩れ、両者が「昨日の友は今日の敵」に変わりつつある。また、中国ではAndroid OSの亜流が多数出現し、グーグルの意に反して、Androidの分裂（対応の必要なOSバージョンの増加）が進んでいる。

■国内海外の主要携帯事業者のARPUの動向（2012年7月〜9月期）
〜ARPUの定義にみる各社戦略の違い

○概観
世界の携帯通信市場の2012年7〜9月期は、料金値下げや割引拡大、VoIPによる音声通話の増加等により音声ARPUの減少傾向が続く一方で、スマートフォンの普及やLTEサービスの開始等によりデータARPUは継続的に増加している。また、各社の戦略の違いにより、KPIとしてのARPUの定義に変化が現れるようになった。