2011年9月22日掲載

2011年8月号(通巻269号)

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コラム〜ICT雑感〜

日本の社会実験〜「時間」に対する意識改革

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 電力供給量の不足を受けて始まった今夏、職場や家庭で始まった様々な電力削減施策、みなさんの職場や家庭でもいろいろな知恵を絞って対応されていることだろう。当社においても同様に、これを機に陳腐化したICT機器類を最新化する(これはかなりの効果がある)等の物理的節減施策に加え、フレックス勤務のコアタイムを10時〜13時に変更してピークカット対策にあたったり、在宅勤務の試行等ソフト面での施策を実行しているところである。

 ところで、この勤務日時の変更や在宅勤務の実施等のソフト面での変更が、我々日本人の意識を変化させ行動形態を大きく変えることになるのではと、私自身は考えている。多くの企業や部署が平準化を目指して異なる勤務体系をとることにより、コミュニケーションの必要上(会議の設定や仕事の段取り)、今まで以上に「時間」を意識せざるを得ない。つまり「時間」がクリティカルな有限の「資源」であるということが再認識され、そのリソースを最大限活用するための「時間設計」を、個々人や各組織体が実施せざるを得なくなったということである。

 「時間設計」という概念は、日本社会全体に大きな影響を与えるのではないか。例えば直接的にはかねてから指摘のある「日本のホワイトカラーの生産性」が改善する等々であろうが、何よりも個々人が「有限な時間」を前提とした思考・行動や、更には人生設計(ワーク・ライフ・バランス)を考えることにより、今まで以上に個人の自律的な意識を高めることになるのではないかと思うからである。

 この「有限な時間」を基にした「時間設計」を実現させる有効な手段の一つがICTと捉えることができるだろう。移動時間の削減や、コミュニケーションの手段として、今まで以上に安価で、使いやすく、信頼性のあるサービスや機器が求められ、商品化されていくことになるのだろう。

 これまでも「個人を尊重する、ゆとりある生活を」というスローガンや、例えば「サマータイム制度の導入」が議論されては消えていった。これらは曖昧な目的意識や目標感、あるいはまずは制度の導入ありきということで、目に見える形での危機もなく、本質的なところを考えずに議論されてきたのからではないかと考えている。

 今回の電力需給の逼迫が私たちの生活に与えた影響は大きく、決して心地よいものではないことは確かである。しかしながら、視点を変えてみると、ICT機器類の技術革新(低電力消費機器の開発等)や更なるICT利活用等に加え、なによりも「個人や社会の意識の変革(例えば「時間設計」)」という今後の日本の経済成長や、競争優位性を維持するための重要なキーファクターが隠されていると思う。与えられた絶好の機会として、是非これら目にはみえない有益な資産を活用していきたいものである。

企画総務グループ/情報サービスビジネスグループ部長 田川 久和

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