2010年12月22日掲載

2010年11月号(通巻260号)

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コラム〜ICT雑感〜

温故知新:○○の法則

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 ICT分野では多くの法則が提唱されている。

 「グロッシュの法則」はメインフレーム機の時代にハーバート・グロッシュが提唱した「コンピュータの性能は価格の2乗に比例する」という法則で、例えば、1億円の機種2台よりも2億円の機種の方が処理能力が高い、ことを意味している。

 この法則に従ってメインフレーム機は大型化し、企業のマシン室や大型計算機センター等に設置され、多数の利用者や処理に使用された。

 「ムーアの法則」は1965年にインテル社の共同創業者のゴードン・ムーアによる「半導体の性能は18〜24カ月で2倍になる」という法則である。これは半導体が微細化により、集積度と速度が向上し、消費電力が低減するためであり、この法則に従った半導体の性能向上は飽和傾向ではあるが現在まで続いている。例えば世界初のワンチッププロセッサであるインテル4004は1971年に発売されクロック周波数は500〜741kHz、製造プロセス10μm(0.01mm)であったが、2000年に発売されたペンティアム4では最高3.8GHz、65nmであった。計算してみるとこの法則の通りであり、数十年間、この法則に従った性能向上が続いているのは驚異である。

 「メトカーフの法則」は1995年にロバート・メトカーフが提唱した法則で、「通信網の価値は利用者数の2乗に比例する。また通信網の価格は利用者数に比例する」という法則である。これは、ネットワークに接続するコストは一次比例するが、その価値は利用者どうしのコミュニケーションによって高まるので組み合わせ数により累乗的に増えるからである。インターネットの普及は、コンピュータの性能向上、価格低下や通信回線の高速化、低価格化によるものが大きいが、この法則によってサービスや利用者の爆発的拡大が起き、また続いているとも言えるだろう。

 「ポラックの法則」は「プロセッサの性能はそのダイサイズの平方根に比例する」つまり「集積度(素子数)を上げてもその比率で処理性能は向上しない」というものである。発熱量は集積度に比例するので発熱量当たりの処理能力は逆に低下してしまう。この法則によりCPUのマルチコア化、メニーコア化が進み、ノートパソコンやゲーム機でもマルチコアはごく普通になっている。

 ところで、今や世界中を覆う(パブリック)クラウドであるが、超大型・高速の集中的なサーバやセンタではなく、超分散システムで構成されている。これはクラウド全体でメニーコア構成であり「ポラックの法則」に従っていると言えるだろう。

 また「Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです」と表明されているが、このようなGoogleの志向とその利用者の増大は「メトカーフの法則」そのものであろう。

 「ムーアの法則」はまだ続いており、最新のコンテナ型データセンタでは数十万という日本での年間のサーバ出荷台数に迫る超多数のCPUによる高密度のセンタを構築可能である。更に「究極的には世界は4台のコンピュータ(クラウド)に収束する」という意見もあり、これは「グロッシュの法則」を想起させる。

 日進月歩のICT分野であるが、意外に基本的な法則や原理は昔から変わらないのかも知れない。

 この意味で時には「○○の法則」を振り返って見たいものだ。

マーケティング・ソリューション研究グループ 取締役 田中 和彦

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