2010年10月13日掲載

2010年8月号(通巻257号)

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[tweet] コラム〜ICT雑感〜

日本はなぜ敗れるのか

  先日のヤフー・ジャパンがグーグル検索エンジンを導入という発表で、まず頭に浮かんだ言葉である。山本七平氏の著作で太平洋戦争での日本の敗因を分析した著書「日本はなぜ敗れるのか−敗因21カ条」である。

  日本のICT産業は米国をお手本にしつつも、独自の研究や知恵と工夫を重ね、一時は世界に誇れるレベルまで到達していた。スーパーコンピュータ、汎用コンピュータ、PC、半導体、携帯端末等々多くの例をあげることができるだろう。ところが今世紀に入るあたりから雲行きがおかしくなってきて、多くの分野であっという間に後塵を拝することとなってしまった。「いや、そんなことはない。まだまだこの分野は。。。」とか、「これからはモノとソフトが一体となったサービスで勝負する時代だ」とかいろいろな批判もあるだろうが、少なくとも他を圧するほどの競争優位性があるとはいえず、事実は事実として受け止めることが肝要であろう。

  それではICTの分野だけかというと、どうもそうではなさそうである。あるビジネススクールの著名な講師が「不正会計は日米関わらず発生したわけで、インパクトという意味では、むしろ米国のほうが件数においても額においても大きかった。にもかかわらず日本の大手会計法人はすべて米国会計法人の軍門に降ってしまった。この意味するところがわかるか?」と問いをだした。その際取りあげた書籍が、山本七平氏の著作であった。「このタイトルが、なぜ敗れたと過去形ではなく、なぜ敗れるのかと現在形になっていることに着目することだ。なにかが見えてこないか?」

  著作中の敗因21カ条は「陸軍専任嘱託として徴用され、ガソリンの代用品となるブタノールを粗糖から製造する技術者として徴用され。。。フィリピン島に派遣され。。。終戦を迎えた」小松真一氏が「虜人日記」で記したものである。ここで敗因21カ条すべてに解釈を加えようとは思わない。印象に残ったものを3つあげるとするならば、(1)反省力なきこと、(2)個人としての修養をしていないこと、(3)思想的に徹底したものがなかったこと、である。この3つを解釈すると、過去にあった失敗から目をそむけることなく、しっかりと分析する目を持つ冷静さと客観性を常に磨き、何が問題で、どこに問題があって、なぜそうなったのかを考えぬいた上で、では新たな局面、事例においてどうすべきかを考えるということだろう。

  経済のグローバル化が進みBRICsが勃興期を迎える一方、国内では急速な少子高齢化が進むという外部環境の変化の中、情報通信分野においてもテクノロジー面ではNGN、WiMAX、LTE等の出現が、またマネージメント面ではグローバルレベルでの広範囲・分野にわたるM&Aが加速化する状況にある。いま一度過去の事実・失敗を冷静に見つめなおし、改めて今後のICTを考える時期にきているのかもしれない。

企画総務グループ/情報サービスビジネスグループ部長 田川 久和

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