2010年3月8日掲載

2010年1月号(通巻250号)

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[tweet] 巻頭”論”

ホームICTによるライフサポートと内需拡大

 2010年、新しい年となりました。民主党主導の鳩山新政権にとって2年目、具体的な政策立案および予算編成など、真価が問われる年になります。また、今年は夏に、参議院議員選挙が予定されており、有権者の側から見ても、新政権に最初の審判を下す大事な政治の年であります。一方、経済面を見ると、景気は底を打ったとの基調ではありますが、残念ながら、聞こえてくる話題は値下げ、値引き、デフレの話ばかりで、企業活動だけでなく生活水準まで縮小・低下していく気持ちになってしまいます。何とか、生活実感として前向きな満足度の高い製品/サービスが期待されます。

 その中で、国内消費、特に個人消費の拡大策として、ICT関連製品/サービスに注目が集まっています。ここ十数年、個人や家庭でのICT消費は、インターネットや携帯電話の進展、PCをはじめとする電子機器の普及などで大きく成長し、1990年代以降、個人消費全体が縮小する中、1990年比で2倍以上の伸びを示して来ました。しかし、まだまだ、個々の製品/サービスは、ほとんど独立して提供・消費されていて、残念ながらホームICT基盤が構築されるまでに至ってはいません。私達の生活において、インフラ側では、ブロードバンド化や無線によるユビキタス化が整備されているにも拘らず、家の中でのICT基盤はこれからの状況です。ホームゲートウェイを通して、家庭内の安心・安全、情報収集、健康管理、機器コントロールなど、さまざまなライフサポートが可能となるばかりでなく、エネルギー制御による省エネ、各種の映像配信などの新サービスが想定されます。

 ホームゲートウェイに、ソフトウェアの配信管理方式の国際基準であるOSGi(Open Services Gateway initiative)を設定することが進められていますが、課題は、こうしたホームICT基盤を活用するサービスプロバイダーが具体的にサービス(アプリケーションやコンテンツ)を生み出すことです。家電メーカーや電力・ガス会社、セキュリティー会社などに関心が集まりますが、私は、もっと別の新製品/新サービスに注目しています。例えば、2008年以降、内外の主要通信キャリアが、テレビ・PC・携帯電話に次ぐ第4のスクリーンを活用した競争戦略を打ち出していますし、なかでも、昨年末、NTT東日本がトライアル端末として発表した「光iフレーム(仮称)」に注目しています。このトライアル端末は、アンドロイドOS採用で、Wi−Fi内蔵、常時起動のPUSH型なので、アプリケーションやコンテンツそれ自体だけでなく、アプリケーションストアなどの自社サービスの促進を図ることができるものですし、さらに、これをホームネットワークの入り口として捉え、ホームゲートウェイに接続して利用したり、他の家電との連携を図ることができるものです。

 特に、アンドロイドOS採用のため、今後、アンドロイドが家電などさまざまな機器に搭載されると、ネットワークキングという付加価値がつけられます。白物家電、家電扱いされなかった体重計やリモコン類、デジタル家電、ICT家電などがアンドロイドを中心にネットワーキングされる訳です。アンドロイドはネットワーク前提のアーキテクチャーを持ち、その上でソフトウェアプラットフォームを提供するので、ネットワークの促進とクラウドへの誘導の役割を果たしていくものと思われます。その結果、利用者は、固定通信網、移動通信網、商用Wi−Fiなどの個別の商用通信サービスよりも、複数のWANサービスの柔軟な組み合わせを求めるようになるでしょう。こうなると、固定と移動で区分され、1機器につき1契約という既存の通信サービスモデルの再構築が迫られる可 能性があります。

 デフレ経済効果の下、個人消費が低迷する中、ICT消費の拡大が進んで来ましたが、新サービス創造につながるホームゲートウェイ、第4のスクリーン、さらにFMCなどを活用したライフサポート・サービスにより内需拡大を一層図ることが出来ると考えられます。新政権の成長戦略の一つに取り入れられることを期待したい。また、生活の満足度向上という、ICT産業の効用を具体的に示すサービスの開発を、通信会社に併せて期待したい。新しい年、2010年は、従来の既存の通信サービスモデルが大きく転換する年になることでしょう。ICT産業の発展を願っています。

株式会社情報通信総合研究所
代表取締役社長 平田 正之

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