2008年11月号(通巻236号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:移動通信サービス>

携帯電話メーカーの音楽配信サービスに、オペレーターが抵抗

 携帯電話メーカーによる音楽コンテンツ配信サービスを巡る動きが活発化している。音楽配信サービスと共に提供するアップルのiフォン登場以来、主要携帯電話メーカーが次々と音楽関連サービスを発表している。しかし、この新たな取り組みに対しオペレータが難色を示している。

 ソニー・エリクソンは2008年9月、同社の携帯電話ユーザー向けの音楽配信サービス「PlayNow plus」を発表した。スウェーデンの移動通信事業者、テレノールと共同で、携帯電話による楽曲ダウンロードおよびその再生が無制限に可能となる。このサービスでは、英EMI Recorded Musicなどの4大レコード会社の楽曲などを揃えており、携帯電話のサービス契約終了後もその多くのコンテンツをそのまま保存して再生可能となる。同社では、このサービスを組み込んだ携帯電話を提供し、さらには人気楽曲をプリロードするなど端末の差別化も図っている。

 ノキアは2008年10月、英国にて定額制の音楽ダウンロード・サービス「カムズ・ウィズ・ミュージック」を開始した。サービスに対応する端末を購入すると、1年間無料、無制限で音楽ダウンロードが可能となり、ダウンロードした音楽ファイルは、無料サービスの期限が切れた1年後でも保持できる。ノキアではこのサービス提供に際し、4大レコード会社全て、および複数のインディーズ・レーベルと提携している。また、このサービス対応の同社初となるタッチパネル搭載の「5800 XpressMusic」を発表した。端末は複数の国で2008年末に発売される予定だが、この端末に音楽サービスのアクセス権をつけた販売価格はまだ明らかにされていない。

 こうした携帯電話メーカーに対し、オペレータが抵抗する動きも出ている。報道によれば、ノキアが対応端末として新たに発表した「5800 XpressMusic」はオペレータから端末販売の協力申し出がなく、家電量販店を通じて販売される見通しである。オペレータは、自らもモバイル音楽配信サービスを提供していることから、ノキアの参入に強い抵抗を示しており、国によってはサービス開始時期が決定していない。ソニー・エリクソンは、オペレータとの合意がまだ実現しておらず、ドイツでのサービス開始を当面見合わせるとしている。

 英調査会社インフォーマの推測によれば、モバイル・ミュージックによる収益は2008年には123億ドルを超える見込みだが、現状ではこのほとんどが着信音やリングバック・トーンによる収入だ。海外では楽曲のフルダウンロード・サービスは口火がついたばかりであり、今後5年以内に急成長の期待がかかる潜在性の高い市場となっている。一方、携帯電話端末市場は厳しい。携帯電話市場はこれまで右肩上がりに伸びてきたが、2008年には前年比マイナスとなる見込みで、今後新たな成長は見込めないだろう。さらに、メーカー間での競争は熾烈さを極める一方である。そこで携帯電話メーカーは、強いブランド力を背景に成長が見込まれる音楽配信サービスにより顧客を囲い込み、さらに新たなる収益源の確保の道を探っている。

 携帯電話メーカーによる音楽配信サービスは、自社にとって最大の顧客でもあるオペレータとどう折り合いを付けていくか、さらに、オペレータの販売店の店頭にあるサービス契約付で安価に提供される端末とどう対抗していくかなど、新たなサービスに課題は山積しているようだ。

宮下 洋子(Yoko MIYASHITA)
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