2008年10月号(通巻235号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業

ベライゾン・ワイヤレスとAT&TがSNSのワンストップ・ポータルを開設、モバイルSNSへの期待感が高まる

 ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tはともに2008年9月9日、複数のSNS(Social Networking Service)サイトを、携帯電話上の単一インターフェースに統合した新たなポータル・サービスを開始したと発表した。両社とも、SNSは携帯電話との親和性が高いアプリケーションと位置づけ、売上げに貢献するものと期待している。

■米携帯電話4社がインターキャスティング社のアンセム・プラットフォームを採用

 いずれのサービスも、SNSアグリゲーターであるインターキャスティング社が提供する「アンセム(Anthem)・プラットフォーム」を採用したもので、ベライゾン・ワイヤレスからは「ソーシャル・ライフ(SocialLife)」、AT&Tからは「マイ・コミュニティーズ(My Communities)」の呼称でそれぞれ提供されている。

 両社が提携するSNSサイトには、最大手のMyspaceを始めとして、エスニック向けのAsianAve、BlackPlanet、MiGente、クリスチャン向けのFaithBase、ブログサイトのLiveJournal、写真共有サイトのPhotobucket、モバイル特化のRabbleおよびGLEEが名を連ねる。ベライゾン・ワイヤレスではこの他にラテンミュージックのMTV Tr3s、AT&TではブログサイトのXangaも提供している。ユーザーは、各社のサイトからポータル・サービスのゲートウェイをダウンロードすることで利用可能となる。これらのポータルでは、すべてのサイトでPCと同様の機能が利用できるというわけではないものの、携帯電話を使い時間や場所を問わず、単一の画面から共通のインターフェースで、好みのSNSのメッセージを確認したり、友人の承認/否認を行ったり、コメントを送ったり、プロフィールを更新したりすることができる。さらに、アンセム・プラットフォームではカメラ付き携帯電話機で撮影した写真を直接プロフィールにアップロードすることもでき、また、複数のサイトへコメントとともに送付することも可能である。また、AT&Tのマイ・コミュニティーズでは、PCを介さずとも直接携帯電話からSNSに新規登録することもできるという。ベライゾン・ワイヤレスからは月額1.49ドル、AT&Tからは同2.99ドルで提供されている。これらのサービスは、操作が簡単で利便性が高いとして、ブログでも好評価を得ているようだ。

 インターキャスティング社のアンセムは、その操作の簡便さによりモバイルSNSのプラットフォームとして注目されている。同社は、すでにスプリント・ネクステルおよびT−モバイルUSAとも提携しており、今回ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tが加わったことで、米国の主要携帯電話事業者4社すべてにアンセム・プラットフォームを提供することになる。この他にも、若年層を中心にMVNOを手がけるバージン・モバイルUSAや人気SNSサイトのビーボ(Bebo)も同プラットフォームを採用しており、同プラットフォームが、米国の携帯電話においてSNSの標準プラットフォームとしての位置を占めつつあるといえる。

■ヤフー!、「ワン・コネクト(oneConnect)」をiフォン向けに提供

他方、ヤフー!は2008年9月10日、アップルの「iフォン」および「iPodタッチ」向けに「ヤフー!ワン・コネクト・プレビュー・フォー・iフォン(Yahoo! oneConnect preview for iPhone)」を無料で提供開始した。同サービスは、利用者の交友関係を反映したアドレス帳を中心に据え、各種SNSやメール、IM、SMSを携帯電話の一つの画面に統合し、情報を一括管理する(「Pulse」機能)。他にも、親しい友人の状況をリアルタイムに把握し、スピーディーにメッセージを送信できる(「Favorites」機能)。「ヤフー!ワン・コネクト」は、iフォンを始めとするインターネット・フリーな環境を実現する高機能な携帯端末を中心に、利用が拡大していくかもしれない。

■SNSのモバイル・シフトを加速?

 携帯電話事業者にしろ、ポータル事業者にしろ、こうしたサービスが登場する背景には、複数のSNSサイトに参加し、日常的に携帯電話からアクセスするユーザーが急増していることが挙げられる。特に、これまでサービスやコンテンツを囲い込むことで、独自の垂直統合モデルを構築してきた米国の携帯電話事業者が、様々な携帯電話事業者の利用者を会員として抱えるSNSの提供事業者を積極的に取り込んでいることは、SNSが無視できないほど、社会に浸透していることを象徴しているといえよう。eMarketの調査によれば、世界のモバイルSNSの利用者は、2007年の8,200万人から、2012年には8億人にまで増加すると予測されている。また、先のバージン・モバイルUSAによれば、同社の加入者のうち、35歳以下の利用者のうち63%が一つあるいは複数のSNSサイトに参加しており、そのほとんどが日に1回以上はサイトを訪問するという。米国の主要携帯電話4社がSNSのワンストップ・ポータルを開設し、インターフェースを統一したことにより、今後は、同様なワンストップ・ポータル導入の動きが世界的に加速するものと思われる。同時に、SNSを介し、携帯電話事業者をまたがるコミュニケーションの増大も見込まれることから、利用者にとっても、携帯電話を介してSNSを行うことの利用価値が高まるだろう。携帯電話事業者とモバイル進出をねらう主要ポータル事業者との協調、ないし競合関係が活発化することで、ますますSNSのPCから携帯電話へのシフトが進むのではないだろうか。

<アンセム・プラットフォームを利用したSNS画面(ベライゾン・ワイヤレスの「ソーシャル・ライフ」より)><ヤフー!「ワン・コネクト」の画面(AT&Tのiフォンより)>

武田 まゆみ
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