2004年6月号(通巻183号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:政策・規制>

FCC、番号ポータビリティの導入状況を公表

 FCCは2004年5月、ローカル番号ポータビリティ(LNP)に関する導入状況を公表した。LNPは固定及び携帯電話利用者が契約先の電話会社を変更した後にも、既存の電話番号を使えるサービス。1996年通信法で全ての固定電話会社(LEC)がその導入を義務づけられ、携帯電話会社についてもFCCが同様に導入を義務づけている。以下、LNPの現況について概観する。

(図表1)総ポート数350万件の内訳
 米国で初めてLNPが実施されたのは、固定電話会社間のポーティングで1998年から。携帯電話間および固定電話と携帯電話間については、2003年11月23日より全米トップ100市場の大都市で開始されている。諸外国と比べて特徴的な固定電話と携帯電話間のポータビリティ導入については、固定電話サービス市場における競争の強化を目的としたもの。FCCによると、携帯電話に番号ポータビリティが導入されて以来の総ポーティング数は約350万となっている。その内訳は、携帯電話間が約334万、固定から携帯が約22万9,000、携帯から固定が約7,000(図表1参照)。当初アナリストが予想していたよりも番号ポータビリティは利用されておらず、携帯間でのポーティングがほとんどを占める結果となっている。ウォールストリート・ジャーナルによると、このままの水準でポート数が推移すると年間ポート数は約600万となるが、もともとアナリストは3,000万と予測していたという。

 携帯電話の番号ポータビリティが当初の予想ほど利用されていない原因として、「他社から移ってくるほとんどの携帯電話利用者は番号が変わることを嫌がらない(ウォールストリート・ジャーナル)」ことや、「携帯電話利用者の8割以上が長期契約を結んでいるとされており、契約を解除するには高額の違約金を払わなければならない(ワシントンポスト)」などの理由が挙げられている。また、USフロントライン・ニューズによると、固定や携帯を問わず、実際の移行に際して何日間もサービスが途絶えるといった問題も発生しており、大手携帯電話会社では、ポーティング希望する利用者の約3分の1が待つことにしびれを切らして申込を取り消したという。このため、携帯電話会社各社は、ポーティングには数週間はかかると、利用者に注意を促しているという。

(図表2)移動体番号ポータビリティに関する苦情件数の推移(月間) FCCによると、携帯電話の番号ポータビリティが導入された2003年11月24日以降、利用者から寄せられた苦情は約7,000件。うち約半数近くの3,104件は導入直後にシステム・トラブルが発生し苦情が集中したAT&Tワイヤレスに対するもの。以下、スプリントPCS1,712件、ベライゾン・ワイヤレス1,712件、T−モバイル991件、シンギュラー・ワイヤレス978件件、ネクステル501件となっている(2004年4月23日現在)。FCCによると、苦情件数は導入直後の2,400件をピークに2004年3−4月期には約400件に減少している(図表2参照)。

 携帯番号ポータビリティに関する最近の大きな動きとしては、2004年5月24日に開始された全米トップ100市場以外での導入が挙げられる。前回2003年秋の導入時には人口比では約70%をカバーする大都市圏が対象であったが、今回はそれ以外の地方都市や農村部が対象となる。今後は都市部や農村部を問わず全米に同じ規則が適用されるが、対象人口が少ないため、前回のような手続き上の混乱は起きないものと見られている。しかしながら、業界団体のCTIAでは新たな導入地域の携帯電話会社は準備が整っているとしながらも、地方の小規模な固定電話会社の間には不安が残っていることを認めている。

 米国の携帯番号ポータビリティは、導入後既に期間が経過している英国等のヨーロッパ諸国と比較して利用が進んでいる状況であるが、最も成功したと言われる香港より利用率は圧倒的に少ない。日本でも2006年度の制度導入が予定されているが、米国の事例のように「番号が変ってもかまわない」顧客層の反応や、解約時の違約金負担によっては利用が低調に留まる可能性もあろう。

移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 平井 隆夫

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