2004年3月号(通巻180号)
ホーム > レポート > 世界の移動・パーソナル通信T&S >
世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:移動通信サービス>

KT、Wi−Fi/EV−DO融合サービスで端末を小型化

 KT(Korea Telecom)は、2004年3月初旬からWi−Fiと携帯電話の双方を利用できる通信サービス「スウィング(Swing)」で携帯電話型の端末を導入する。KTはこれまでWi−Fiとcdma2000 1x EV−DOの双方に対応するPDA型の端末を提供してきたが、これを小型化しさらなる集客力の向上を図り、ホットスポットの加入者を増加させる意向である。

 KTは2002年11月から同社のADSL事業をベースとした無線LANサービス「ネスポット(Nespot)」を提供している。スウィングはこのネスポットの1形態として2004年に入ってから開始したサービスであり、無線LANと移動通信を1台の端末で利用できることを特徴としている。このサービスでは、Wi−Fiとcdma2000 1x EV−DOの双方に対応する端末を提供、無線LANおよび移動通信網を利用したシームレスな通信の実現を図っている。このうち無線LANはKTが、移動通信は同社で完全子会社のKTFがそれぞれ担当し収入を分配するという構造をとる。

 KTは2003年12月、スウィング向け端末開発とマーケティングにおいてヒューレット・パッカード(HP)と戦略的提携を結んだ。ここでは、2004年1月から導入の携帯電話の番号ポータビリティに備え魅力ある端末を開発し顧客離れを防ぐこと、また固定と移動が融合する通信サービスで優位に立つことを目標に掲げた。HPはWi−FiやブルートゥースおよびGPRSなどの無線通信機能に対応したPDA「アイパック(iPaq)」を売り出してきたが、この提携によりCDMA市場への本格参入を図る意向もある。スウィング対応端末は、この他にもサムスン電子系のベンダー、サイバーバンクも開発に取組んでおり、3月には先駆けてこのサイバーバンク製のものが登場する。

 韓国ではADSLを利用したブロードバンド・サービスが広範に普及しており、KTではこれに乗じホットスポット事業を拡大するという戦略の下、ネスポットを展開してきた。同社のスポット数は2003年末時点で13,000ヵ所と世界的に見ても群を抜いた規模となっている。ネスポットの利用シーンを見てみると、家庭などに敷いたADSLにKTのアクセス・ポイントを設置しワイヤレス環境を構築、家族が1回線で複数の端末をインターネットに接続して利用するというのが典型的であった。

 一方子会社のKTFは、2003年2月からcdma2000 1x EV−DOを開始、加入者も順調に増加している。KTでは子会社の移動通信事業と共同で、携帯電話ユーザーをホットスポットに巻き取るという目論見のもとスウィングを企画した。KTとHPとの提携後に間もなくスウィングを開始、Wi−Fiとcdma2000 1x EV−DO双方に対応するPDA型端末を販売してきたが、加入者の伸びは芳しくなかったと見られる。これは、PDA型という現状ではマス・コンシューマーに受け入れられ難い端末であることが一因だろう。そのような難点を克服すべく、3月に発表になる端末は、およそPDAと通常の携帯電話と中間程度の大きさにまで携帯電話に近づけ小型化を図った。

 携帯電話にWi−Fiを搭載するという試みは数々の企業が取組んでいる。しかしながら、端末の電池寿命や大きさの問題、VoIPを採用する際に移動通信による音声通話との棲み分けや料金設定など、残された課題も少なくない。このような状況の中、世界に先駆けて進んでいるスウィング対応の新たな携帯電話がユーザーに受け入れられるのか、注目されるところである。

移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 宮下 洋子

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。