2003年7月号(通巻172号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:ネットワーク・スタンダード>

韓国固定通信事業者、2.3GHzでモバイル・ブロードバンドをデモ

 韓国でのモバイル・インターネットの動向に新たな展開が現れた。韓国固定通信事業者のハナロテレコムは2003年5月27日、2.3GHz帯にて高速無線インターネット・サービスのデモを行ったと発表した。韓国では、KTも同周波数帯でのデモを2003年3月に実施しており、モバイル・インターネットの世界に携帯電話、無線LANに続く新たな競合相手が登場しつつある。本稿では、韓国の2.3GHz帯における状況を概説する。

■ハナロの2.3GHz無線インターネットサービスのデモについて

 ハナロでは今年1月にも2.3GHz帯にて、アレイコム社のi−BURST技術を利用した実験を日本の京セラと共同で行っており、今回が2回目のデモとなる。今回は2.3GHz帯にて米フラリオン社のflash-OFDMと呼ばれる技術を用い、移動時に1Mbpsの高速インターネット通信を可能にしたとのことで、京畿道一山長項洞近隣を時速60Km/h以上の速度で走行しながら、平均通信速度1Mbps級の安定的なインターネット通信が可能であることを見せた。また、同技術は室内の静止状態では最大3.2Mbpsの通信も可能になるとし、無線LANとの自然な連動も実現可能としている。

 同社は、今後フラリオンとともに約3ヶ月の間フィールドテストを実施し、flash-OFDM技術方式に対する検証、2.3GHz電波環境測定などを行い、2003年8月までにすべてのフィールドテストを終えて、9月からは本格的な試験サービス提供に入って行く予定である。

 同社はこの他にも6月から米ブロードストーム社のOFDMA−TDD(Orthogonal Frequency Division Multiplex Access-Time Division Duplex;直交周波数分割多重接続−時分割方式) 技術を利用したフィールドテストも同時に進行するとのことで、多様な技術方式によるフィールドテスト推進を通じて韓国内の無線高速インターネット技術を先導して行くという方針である。

■韓国の2.3GHz帯について

 今回なぜ、韓国で2.3GHz帯での無線インターネットの提供が可能となったかについてであるが、元々この周波数帯は、韓国ではWLL(加入者無線)として利用するはずのものであった。しかしながら、周波数の割り当てを受けたKTとハナロでは、2000年10月からWLLサービスの提供をはじめたが、ほとんどサービスを拡大をしなかった。このような状況下でハナロやKTは2001年ごろから同周波数帯にて、高速無線インターネットを実現する研究開発を進めていた。2002年10月には韓国情報通信部が、同周波数帯を無線インターネットに利用してもよいとする「2.3GHz周波数利用政策推進方案」を提示するに至ったため、今回の各社のデモということとなった。ただし予定では韓国情報通信部は2002年内には商用の周波数を割り当てる(KTとハナロに既得権を認めないという方針ではあるが)予定であったが、現状ではまだ、再割り当ては実施されておらず、KTやハナロは依然デモのみを実施しているという状況である。

 また、韓国情報通信部では、国内統一方式を目指しているが、2.3GHzの周波数利用に関する具体的な方式の決定は多様な技術の出現などによる市場・技術変化が目まぐるしい点などを勘案して、2004年中に段階的に推進していくという方針である。

■2.3GHzサービスの与える影響について

 今回の2.3GHz帯における無線インターネット・サービスは携帯電話事業者にとっても、大いに脅威となると考えられる。それは、無線LANと違い、このサービスも携帯電話と同じで広域エリアをサポートするものであるからである。一部情報筋によると同方式の1つの基地局のエリアは、携帯電話の基地局と同程度であり、携帯電話と同じようにハンドオーバー機能もサポートしているとのことである。また同サービスを提供するのが、KTやハナロなど固定通信事業者の予定であることも、現状SKテレコム、KTF、LGテレコムの3社が構成する移動通信業界における新規参入となり競争の激化を招くと考えられる。KTが今年の3月に実施した2.3GHz帯のデモの中で、無線インターネット上でのVoIPサービスの展開も考えているといっており、もし今後、同社が無線インターネットだけでなく、音声通信しかも定額料金を提供するようなことになれば、韓国の移動通信界に大変動をもたらす可能性もあると思われる。

 韓国では現在、高速モバイル・インターネットとしては、無線LANとcdma2000 1x EV−DOが提供されているが、今後、2003年にはSKテレコム、KTFからW−CDMA、2004年にはLGテレコムから最大通信速度4.8Mbpsのcdma2000 1x EV−DVも提供される予定である。これにこの2.3GHzの無線インターネットが加わることとなり、さながら、無線インターネットの実験場と化しているような状況が生まれつつある。今後、世界の最先端を走る韓国の通信事業者がどうなるかまた、どの技術、方式が生き残っていくのかは、非常に注目されるところである。

ハナロテレコムの2.3GHz無線超高速インターネットサービスと他サービスとの比較
出典:ハナロテレコム・プレスリリースより(http://www.hanaro.com/
移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 宮下 敬也
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