2002年8月号(通巻161号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース・移動通信サービス>

mmO2が欧州初の3Gトライアルにおいて
        3Gデータ通信料金を発表

 英mmO2(旧BTセルネット)は2002年6月18日、英国マン島のマンクス・テレコム(mmO2の100%子会社)が2001年12月より試験運用を開始していた第3世代(以下3G)移動体通信ネットワークのデータ通信サービス料金を発表した。

 mmO2が試験を行なっている3G(W−CDMA)サービスは、マン島に24の基地局を設置し、人口カバー率85%で提供されている。ネットワークや端末、アプリケーションはNECとシーメンスが提供している。通信速度は下り384kbps(現行GSMの約40倍)、上り64kbpsを実現した。mmO2は3G用に開発された様々なアプリケーションをこの高速インフラ上で試験提供し、モニターに利用してもらう事で、ユーザーが求める3Gアプリケーションを見定めるのが目的であると考えられる。

 今回マン島にて実際に3Gの試験運用を行っているのはmmO2の100%子会社マンクス・テレコムである。試験運用開始にあたって事前にモニターを募集し、限定した人数での試験を行なっている。モニターの募集数はマンクス・テレコムの予想を上回る人数が殺到し、英国でも3Gへの関心の強さがうかがわれた。なお本格的サービス開始は、2003年後半を予定している。

 試験が行なわれている英自治領マン島とは、アイルランド海の小島であり、人口は7万5,000人と小さな島ではあるものの、英国では新テクノロジーのテスト・マーケティング用地としては面積、人口ともに最適だとみなされており、様々な新製品テストにしばしば利用されている。実際旧BT(現在のBTグループ)も英本土でADSLサービスを展開する前にマン島で試験を行なっている。

 今回発表された3Gデータ通信料金は、mmO2の3G実験における最大の目的の一つである「3Gデータ通信料金」の適正価格、および価格設定方法検討のために発表されたものである。よって本料金プランはあくまでトライアル用であり今後変更がありうるものである。今回提示された料金プランは需要毎に4種類用意しており、大企業向け、中小企業向け、一般消費者向け、およびWAP利用者向けである(図表1)。ご覧のとおり、3Gデータ通信を利用するには必ず月額基本料金を必要とする料金体系となっており、その分初めの数MBまでが無料で利用できるようになっている。すなわち、いわゆる準定額的なサービス料金である。ラインナップとしても月に100MB以上利用するユーザーも視野に入れた幅広さがポイントである。

3Gデータ料金プラン

 1パケットあたりの料金はエンタープライズ・タイプ(50MBまで利用可)の料金で0.03円(1ポンド184円で換算)と、NTTドコモのFOMAの価格帯(約50MB利用のタイプで0.02円/パケット) に非常に近いところに設定している。まずは日本の商用価格と近いところに設定した上で、英国における3Gのカスタマー・バリューを計ろうということであろう。mmO2は料金プランの発表と同時に典型的な利用方法とそれに伴う請求料金の目安も発表した(図表2)。ご覧のとおり、コンシューマー・タイプを見てもデータ通信だけで月額8,000円近く支払うものであり(基本料金+超過パケット分料金で算出:図表2参照)、モバイル・インターネットが盛んな日本でさえもこれほど利用されるかどうか疑問のある「目安」である。しかし今回の実験でこのような利用パターンの細かな分析を行ない、ユーザーが各アプリケーションにどの程度の料金を支払うのかを見極めた上で、そのサービス毎の知覚価値価格をベースに最終的な3Gデータ通信プライシングを行なっていこう、というmmO2の緻密な価格戦略が窺い知れる。

 しかし欧州では日本と異なった3Gプライシングの難しさがある。というのも欧州各国では近年3Gデータ通信の「つなぎ」といわれる2.5Gデータ通信サービスGPRSが続々と市場投下されている状況であり、これと3Gとのバランスをとる必要があるからである。3Gのテスト・マーケティングにおいて、仮に思いきった低価格が必要だというマーケットの声があったとしても、GPRSの投資回収も考慮せざるを得ない状況がそこにある。しかも欧州ではもっぱらSMSコンテンツが市場を席巻している状況でもあり、各事業者がSMS収入に依存する財務状況下で、SMSコンテンツをある意味否定しなければ先に進まないGPRSや3Gといった通信サービスに、どのような価格帯を設定すれば良いのか、欧州各社は大変難しい意思決定を迫られている。

利用パターと料金目安 GPRS料金水準

移動パーソナル通信研究グループ
 リサーチャー 竹上 慶
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