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<世界のニュース:政策・規制>
英国でGSM端末のIMEIの書き換えが違法に英国議会において2002年5月2日、GSM端末のIMEI(International Mobile Equipment Identity)等の書き換え(re-programming)を違法とする法案が提出された。同法案が可決、成立すれば、GSM端末を特定のネットワークでしか利用できないようにするために施されている端末のSIMロックを、正規の手続きを踏まずに(オペレータに申し出て料金を支払うことなしに)解除することが違法化されることとなる。また、盗難の被害に遭った端末のIMEIのリストをデータベース化し、その端末の利用を阻止する措置が講じられているが、IMEIを書き換えることにより端末を不正に利用する行為に対する抑止効果も期待される。英BBC放送が同年5月3日に報じたところによると、英国政府は同法案を支持しており、早急に法制度化される見通しとのこと。 IMEIとは、個々のGSM端末の識別のために付与されている15桁のユニークな番号であり、この番号により、世界中のGSM端末を一意に特定することが可能となっている。(下図参照) 近年、とりわけ欧州諸国において携帯電話の盗難が多発していることがしばしば報じられているが、その影には、GSMの場合、PDCとは異なり、盗難した端末のSIMカードを入れ替えることにより携帯電話として利用できてしまうという事情がある。ちなみに、昨年(2001年)1年間で、英国においては70万台以上、フランスにおいては15万台以上のGSM端末が盗難されているとのこと。 ところが、盗難した端末のIMEIを勝手に書き換えてそれを流通させるという新手の不正行為が横行し始め、IMEIの照合により端末の利用を阻止するという施策も万能ではなくなっていた。なおかつ、端末のIMEIの書き換えそのものを取り締まる法律が英国に存在していなかったため、厄介な問題となっていた。?そこで今回の法案が提出されたわでであるが、その内容は以下の通りである。
この法案においては、IMEIを書き換えることはもちろん、IMEIを書き換えるためのツールを所有あるいは提供、さらには提供することを持ちかけるだけで違法行為と見なすことが提案されている。例えば、IMEIを書き換えるためのツールがインターネット上で販売されていることが確認されているが、そのような業者は、それらのツールを購入した者が非合法的な目的で同ツールを利用することを当然認識した上で販売している訳であり、そのような行為も違法と見なされることとなる。?同法案は、不正なIMEIの書き換えやSIMロック解除などを抑止することを目的としており、その成立が待たれるところである。しかし、GSM端末の盗難には用意周到に組織的に計画されたと思われる事件も数多く、英国でGSM端末を輸送中のトラックがハイジャックされ、数千台の端末がまるごと強奪されるなど、国際規模での犯罪組織の関与も取り沙汰されている。そうした事件で盗難されたGSM端末の多くは、不正に海外に輸出されて流通されていると見られており、今回の法案が成立したとしても、この種の犯罪にどれだけ有効であるかは疑問が残るところである。 これまで、SIMカードおよび端末のセキュリティについては数々の脆弱性が指摘され、セキュリティーを高めるために変更が加えられてはきたが、このような法案が提出されること自体、GSM端末には不正利用に対する脆弱性が存在し、なおかつその影響が無視できないレベルにまで達し、深刻化していることのあらわれであると言えよう。第3世代においては同様の轍を踏むことのないことを祈りたい。ARTが提唱しているように、犯罪行為を抑止するためのインターナショナルな取り組みが必要となるだろう。 |
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移動パーソナル通信研究グループ リサーチャー 木鋪 久靖 |
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