一般に価値観が多様化したと言われますが、必ずしも組織に入って働いてというプランを選ばない人が出てきていると思います。大学生活がモラトリアムで甘い夢を見ているという一面は確かにあると思いますが、大学にいる間に、インターネット技術など、実際に経済的価値がある技術を学んでしまう人たちが出てきています。むしろ、インターネット上の新しいテクノロジーの多くが、学生などモラトリアム中の人間が開発したものです。
僕は、「社会を動かす人」と「社会を変える人」の二通りいると思います。社会を動かす人というのは社会の基盤になる人たちで、普通に大学を出て、組織の中にとけ込んで、毎日しっかりと世の中を動かしていく役人とか会社員。その一方で、社会を変える人というのもいると思います。変化を作ってしまう人、「異端児」という表現の方が適切かもしれません。99%の異端児は多分一生役立たずに終わりますが、1%が起こしたエポック・メーキングが社会を変えるかもしれない。昨今のインターネット騒動にしても、人間の歴史は常にそうではないかと思います。ベンチャー企業というのは異端児の異端会社版だと思います。
AOLがタイムムワーナーを買収したという話は、すごくおもしろいと思いました。AOLは今こそ大きくなっていますが、元はベンチャーです。マイクロソフトも然りです。今後、巨額の企業買収とか合併によって、例えば四天王のようなのができたのではつまらない。技術の発展、知識、新しい発想によって新しく起きたベンチャーが、今のマイクロソフトやAOLやタイムワーナーを呑み込んでいくことが今後何十年にわたってダイナミックに続いていく、そういう経済ができたらおもしろいと思います。
そのベースになっているのがIT(インフォメーション・テクノロジー)です。僕自身、20年ぐらいプログラムをやっていますが、プログラムというのは、新しい発想や独創性のようなものが出てくると、大きく変わるものです。これからも、経済のダイナミズムのベースになるのはプログラミングや開発といったITの部分だと思います。そこは多分これからも同じだろうから、今後もそういうふうに発展は続くのではないかと思います。