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世界の通信企業の戦略提携図(1999年12月8日現在)

12.世界の通信企業Top100報告から

 コミュニケーションズ・ウィーク・インターナショナル誌No234(99.11.15.)に、「モバイル時代来る」と題する恒例の「世界の通信企業Top100」が掲載された。今回から「Top50キャリアー」は「サービス・プロバイダー」に広げてインターネット/ケーブルTV企業を含むものとなり、国際通信サービスの売上高ランキングではなく1999年3月31日現在株式時価総額ランキングによるものになった。ボーダーレス時代に国際通信によるランキングはそぐわないし、成長への期待が企業評価の判断を左右するとの考えで変えたようである。「Top50ベンダー」の方は従来どおりで、通信機器の1998年売上高ランキングによっている。

世界の情報通信サービスプロバイダーTop20
  Top50キャリアーには、NTT DoCoMo(No.2)、Vodafone-AirTouch(No.3)、Telecom Italia Mobile(No.21)、Sprint PCS(No.23)、Orange(No30と移動通信事業者5社が含まれ、いずれも収益性が高い。
 インターネット企業はAOL(No.7)とExcite@Home(No.44)の2社が載ったが、売上高はAOLが総収入47.8億ドル、うちアクセス収入33.2億ドルで、Excite@Homeが総収入僅か48百万ドル、アクセス収入0で、AOLは経営戦略への評価、Excite@Homeはコンテンツ/Eコマースへの期待が株価を高くしている。
光ファイバ伝送路投資中心の新興通信事業者もQwest(No.25)、Globa Crossing(No.26)、Level3(No.47)などが載ったが、先行投資の重みでまだ収益性は低い段階である。
 ケーブルTV企業はMediaOne(No.20)とCox Communications(No.32)が載っている。
 最も異色なのは鉄鋼メーカーMannesmann(No.16)で総収入203.0億ドル、うち通信収入は49.5億ドル(24.4%)に過ぎないが、総収益15.1億ドルの2/3が通信事業によるものである。

 世界Topキャリアー50のうち20位までのリストは表1の通りである。

表1:世界の情報通信サービス・プロバイダーTop20

(出所)99.3.30.現在はCWI誌No.234(99.11.15.)
99.3.31.現在はBusiness Week July12, 1999

99.9.30.現在99.3.31.現在
ランク企業名国籍 時価総額ランク 時価総額
1NTT1,957.821,567.7
2NTT DoCoMo1,888.861,061.4
3Vodafone-AirTouch1,469.715(Vod)  589.7
 16(Air)  578.0
4AT&T1,390.111,816.4
5MCI WorldCom1,346.331,522.4
6Deutsche Telekom1,240.241,150.2
7AOL1,153.1
8Bell Atlantic1,045.19849.9
9SBC Communications1,004.571,003.2
10British Telecommunications985.051,071.4
11France Telecom899.210799.3
12BellSouth848.48893.8
13GTE754.014611.1
14Ameritech733.811723.3
15Telstra666.813638.9
16Mannesmann622.817536.7
17Telefonica西512.018511.5
18Telecom Italia456.712664.5
19Sprint Fon Group423.819484.9
20MediaOne414.320462.1

 ソース(情報源)の違う数値を一表にするのは問題もあるが、僅か半年で上位がこれだけ動く今の業界模様を知る参考にはなろう。

世界の通信機器メーカーTop10
 CWI誌の「Top50ベンダー」報告を見ると、50社の売上高合計は約2,400億ドル、前年比6.6%増と、安定的である。うちTop10の売上高合計は全体の68%に達し、1995年の64%より集中度が上がっている。
 Top10の顔ぶれも、NECが収入前年比−20%で順位がNo.8に下がり、IBMがNo.10に入ってFujituがNo.11に去り、Noikia(No.8→N0.7)とCisco Systems(No.10→No.9)の順位が上がったほかは変わりがない(表2参照)。

表2:世界の通信機器メーカートップ10

順位
98/97
企業名国籍通信機器
売上高($m)
同左対前
年比(%)
1/1Lucent Technologies26,84517
2/2Ericsson瑞典23,20013
3/3Motorola20,5132
4/4Alcatel19,92123
5/5Nortel Networks17,57517
6/6Siemens16.26011
7/8Nokiaフィンランド13,86359
8/7NEC11,399−20
9/10Cisco Systems8,45931
10/13IBM5,71618

 移動通信機器メーカーNokiaの売上高は138.6億ドル(前年比59%)、CDMA専門メーカーQualcomm(No.16)は売上高33.4億ドル(60%増)をそれぞれ記録した。
 通信機器メーカーNo.1のLucent Technologiesは前年比17%増と順  調に伸びてNo.2 eEricssonに対するリードを広げ、No.4 Alcatelは23%増を記録して、N0.3のMotorolaに迫りつつある。
 通信機器市場の成長を支えたのは、移動通信/インターネット機器市場の拡充、企業買収による規模拡大、サービス事業収入の拡大であった。


13.インターネットを巡る争いはAOLの勝利

 先にMonthly Focus No.2の4.「MS vs AOL:インターネットを巡る争い」で報じた「インスタント・メッセージ」ソフト問題は、マイクロソフト(MS)が99年11月17日(水)に敗北を認めたことによって、AOLの勝利で結了した。

 MSはAOLのブロッキングによってMSソフトのセキュリティに問題が生ずるとの理由でAOLの「AIM」インスタント・メッセージ・サービスとの相互運用断ったMSN Messenger Service version2.0を発出した。

 MSインターネット事業部のYusuf Medhiマーケティング部長はAOLを訪問して、異ソフトユーザ間でメッセージのやり取りができるように、電子メールと同様のインスタント・メッセージ・ソフトの標準化を進めるための協力を要請した。

 これより先99年11月5日にMSは、司法省訴追の反トラスト法違反事件についてワシントン連邦地裁ジャクソン裁判官より、(1)MSはパソコンOS市場において独占力を有している、(2)独占的シェアはライバル企業をOS市場から締め出すことによって獲得した、(3)MSはライバル企業の新規参入を阻止し、技術革新を妨げ、消費者の選択の機会を奪って消費者利益を損なった、(4)MSが主張する経済効率性は疑わしい、との「事実認定」を受けた。

 米国の独禁訴訟は通常、(1)「事実認定」:被告企業が問題となっている市場について競争を制限・阻害しているかどうかの判定、(2)「独禁法の適用」:被告企業による競争の制限.阻害は独禁法に照らして違法か合法かの判定、(3)「排除措置」:被告企業に対する具体的な競争復活の措置、の3段階からなる。

 ワシントン連邦地裁ジャクソン裁判官は事実認定書の送付と同時に、「独禁法の適用」についての「見解」を司法省は99年12月6日に、MSは2000年1月17日に提出するように命じた。従って「独禁法の適用」  は早くて2000年2月初旬、「排除措置」は春になるだろう。

 厳しい「事実認定」を受けたMSのビル・ゲイツ会長は11月10日の定時株主総会で「これは法廷闘争の第一歩に過ぎなず、最後の勝利は我々にある」と述べたが、「独占力を行使して消費者の権利、健全な市場競争を破壊した」との事実認定は、今後のMS経営戦略の展開において無視できない影響をもつと考えられる。


14.ボーダフォン・エアタッチがマンネスマンを呑むか

 ドイツのマンネスマンが99年10月に英国第3位の移動電話会社オレンジを買収したのに刺激され、ボーダフォン・エアタッチは99年11月13日にマンネスマン経営陣に買収交渉を申し入れたが拒否されたため、11月19日に敵対的買収(TOB)に乗り出した。TOBの内容はマンネスマン1株につきボーダフォン53.7株を交付する株式交換合併で、ボーダフォン株式の11月18日終値より16%高い240ユーロ、247ドルに相当し、買収金額は1,030億ユーロ、1,055億ドルに達する。

 ボーダフォン株価が上がって2402ユーロは262ユーロになったため、12月初頭の買収金額は1,360億ユーロ、1,393億ドルに達したが、マンネスマンのK.エッサー社長はマンネスマン株の価値は300ユーロある筈で安すぎるとして、乗らない姿勢である。

 シュレーダー首相は敵対的買収はドイツの企業風土に馴染まないと述べ、ボーダフォンはドイツ特有の監査役会制度に従わないだろうと労働組合側は警戒し、ドイツの世論は反対一色であるかに見える。しかし、TOBは少数株主の利益を代表するものであり、マンネスマンの有力株主であるドイツ銀行やコメルツ銀行はこれまでのTOBでは買収側に回っている。オックスフォード大学のT.ジェンキンソン教授とA.リンクヴィスト教授の研究によれば最近のドイツの企業合併・買収ではTOBが20件もあり、敵対的買収がドイツの企業風土に馴染まないとの言い方は当たらないとする。

 ボーダフォンは、事務的準備でき次第、間もなく、遅くともクリスマスまでにマンネスマン株主に「買収意向書」を送るとしており、米国や英国では有効だがドイツは違うとされて来た敵対的買収が成功するかどうかが判明しよう。

(関西大学総合情報学部教授 高橋洋文)

(最終更新:1999.12)

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