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情報通信 ニュースの正鵠
2014年5月9日掲載

フォトショッピングに歯止めをかけようとする試み

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
清水 憲人

「フォトショッピング(photoshopping)」という言葉をご存じだろうか?
デジタル画像を加工することを意味する俗語である。

フォトショッピングの語源となったのはもちろん、画像編集ソフトの代表格、アドビシステムズの「フォトショップ(Photoshop)」。

フォトショップは、1990年に登場した歴史の古いソフトウェアだが、現在に至るまで、毎年のようにバージョンアップを続けており、初期の製品と比べるとその性能は著しく向上している。最新版のフォトショップを熟練ユーザが使えば、写真を好きなように作り変えることができる。

たとえば次の動画を見ると、その高性能ぶりがよくわかる。

【フォトショップを使って、一般女性の写真を雑誌のモデルのように加工する動画】

動画にあるように「しわ」や「くすみ」を消したり、プロポーションを変えたりといった加工が簡単にできる。仕上がりも自然で、修正前の画像と比べなければ、加工してあることに気付かないレベルだ。

こうした編集加工は広く行われており、とりわけファッション誌のグラビアや、化粧品の広告にでてくる女性モデルの写真などは、相当な改変が行われていると言われている。

デジタルの時代において、写真はもはや事実を写し取るツールではないと考えた方がいいのかもしれない。

一方、そうした風潮に歯止めをかけようとする動きもある。

米国の連邦下院では先月、「真実の広告法2014(Truth in Advertising Act of 2014)」が提案された。同法案は「人の顔や身体のイメージを著しく改変した画像を用いた広告」を規制しようとするものである(注)。

法案の提案者は「広告などに登場する極端にスリムな体型のモデルが、若年層の摂食障害(拒食症)などを引き起こす要因になっている」と指摘している。

【法案を説明するロス-レイティネン議員】

とはいえ、この法律が成立する可能性は高くない。また、もし規制するとなったとしても、どこで線引きをするのかはとても難しいだろう。しかし、人工的に改変された画像ばかりの未来を想像すると、それはそれでなんだかぞっとしない。

加工画像の氾濫に歯止めをかけるべきなのか? かけるべきだとしたら、どのようにすればよいのか? この法案をきっかけに、そんな議論が始まるかもしれない。

(注)具体的には、公正取引委員会(FTC)に対して、規制の在り方を検討して議会に報告することを求めている。法案の内容は以下のリンクで確認できる;
http://beta.congress.gov/bill/113th-congress/house-bill/4341

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