中国から台湾への頻発するサイバー攻撃：本当の脅威はシステム破壊

台湾科技部の張善政（Simon Chang）氏は2014年8月13日、最近の中国・台湾の関係は良好であるにもかかわらず、中国が台湾へ頻繁にサイバー攻撃を行っていると述べえいることが報じられた（※1）。

「中国からのサイバー攻撃は、ほぼ毎日やってくる。攻撃の多くは台湾との交渉で利用できるような関連情報の窃取を目的としている」とラジオでのインタビューで語った。（"The Chinese cyberwar units have been engaging with Taiwan units almost every day, with some severe attacks every few months," "Many of the attacks were aimed at stealing relevant information for use in negotiations with Taiwan.”）また、台湾軍もサイバー部隊を結成したが、中国のサイバー部隊には数で圧倒されているともコメントした。

台湾の政府機関などのサイトは中国からのサイバー攻撃で頻繁にダウンもしている（※2）。中国と台湾のサイバー攻撃は今に始まったことではなく、政治、経済、社会生活がサイバースペースに依拠するようになってから10数年が経過するが、ずっと続いていることなので目新しいことではない。

2008年の台湾での政権交代以降、台湾と中国の関係は良好のようだ。それにも関わらずサイバー攻撃を受けているとのことだが、「情報窃取」を目的としたサイバー攻撃は、国家間の関係が良好であろうが、そうでなかろうが、行われるであろう。

サイバー攻撃の主な目的は「情報窃取」であることが多く、それらは安全保障にとって大きな影響を与えることは少ない。安全保障にとって大きな影響を与えるサイバー攻撃は、軍事施設や生活、社会インフラへの攻撃によるシステムの破壊である。台湾と中国の間では2013年3月に台湾の国家安全局のTsai De-sheng氏が、中国からのサイバー攻撃が情報窃取によるハッキングだけでなく、交通機関や金融機関などのインフラへの攻撃が行われている可能性があることを警告している（※3）。

サイバー攻撃の安全保障上における脅威の1つは、インフラなどのシステム破壊である。情報窃取のサイバー攻撃から、気が付いたらインフラのシステム破壊を行われることが脅威である。サイバー攻撃は、サイバースペースの脆弱性を突いた攻撃であり、その脆弱性は未知のものが多い。毎日頻繁にサイバー攻撃を仕掛けてくるのは、システムのどこに脆弱性があるのかの確認と、脆弱性へのサイバー攻撃によるサイバースペースへの侵入可否の確認である。侵入後に情報窃取をしていく。インフラシステムの破壊は容易ではないが、サイバースペースへの攻撃を繰り返していくうちに、相手の脆弱性と、そのポイントが掴まれてしまう恐れがある。すなわち、サイバースペースのどこを、どのように攻撃すれば、相手のシステムがダウン、崩壊するかが相手にわかってしまう。

情報窃取を目的としたサイバー攻撃が頻繁に行われているということは、その次の段階であるシステム破壊の脅威が存在することを示唆している。国家間の関係が良好であれ、油断することは決してできない。未知の脆弱性の検出と改修が重要なサイバースペースの防衛は国家の防衛であり、非常に重要なことである。

【参考動画】

*本情報は2014年8月18日時点のものである。