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ICTエコノミーの今
2012年12月5日掲載

ICT経済の推進力、ICT関連設備投資の動向

(株)情報通信総合研究所
マーケティング・ソリューション研究グループ
久保田茂裕
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企業や経済が成長していく上で欠かせないものの一つに設備投資がある。設備投資とは、企業が事業を行う上で必要となる工場や機械等の設備への投資である。企業は将来の収益が見込める分野に設備投資を行い、新規分野を開拓することで、事業を拡大させる。即ち、設備投資は経済成長の原動力である。その設備投資の将来の動向を見通す統計に機械受注統計がある。企業の設備投資の先行指標である機械受注統計を見ることで、6〜9ヶ月先の設備投資の動向を判断することができると言われている。
 毎四半期公表しているICT経済報告では、今後のICTに関連した設備投資の動向を把握するために、その先行指標であるICT関連機械受注の動きを見ることによって代用している。
 図表1は、直近の2012年7〜9月期までの前年同期比寄与度のグラフである。これをみると、機械受注全体の動向は2011年4〜6月期以降減少基調が続いていたことが分かる。その中で、ICT関連機械受注は、10期連続でプラスを維持していたが、この7〜9月期はマイナスの寄与となった。

図表1

図表1

その内容を品目別にみると(図表2)、電子計算機、通信機、半導体製造装置の全ての項目で減少となったことが分かる。半導体製造装置が引き続き減少である他、2010年1〜3月期以来プラスを維持していた電子計算機、同様に2011年7〜9月期以来プラスであった通信機も減少に転じた。

図表2

図表2

企業は、将来の先行きが不透明になるとリスクを回避する観点から、設備投資を抑制する傾向がある。この視点から見ると、機械受注全体は2010年1〜3月期から前年同期比プラスであったものが、前期の2012年4〜6月期には減少に転じた。欧州の債務危機、中国経済の失速、円高といったリスク要因が重なり、海外経済・日本経済の不透明感が増していることが背景にあり、企業はその先行きの不透明感から設備投資を抑制している姿が浮かび上がる。同様にICT投資も、経済が減速すると抑制される傾向がある。例えば、2008年のリーマンショック後の景気後退期は、ICT関連機械受注も減少している。今期の2012年7〜9月期は、日本経済の先行き不透明感が深まる中で、ICT関連機械受注もマイナスに転じた。
 内閣府は、11月6日に発表した9月の景気動向指数の結果を受け、景気の基調判断を「足踏み」から「下方への局面変化」と3カ月ぶりに下方修正をした。景気は後退局面に入った公算が大きいとの見方を示しており、来期も投資面、ここでは機械受注全体の動きは弱いとみられる。それでは、ICT関連機械受注はどのような動きを示すだろうか。
 ICT機械受注の内訳の品目ごとの内容をみると、電子計算機には、大規模コンピュータやサーバ、通信機には、ルーターや携帯電話基地局が含まれおり、半導体製造装置は、あらゆる情報通信デバイスに埋め込まれている半導体を製造するための機械である。ICTはジェネラル・パーパス・テクノロジー(GPT)と呼ばれて、あらゆる産業で多様な用途に活用される技術であり、現在でも、そして将来になればなおさら、ICT関連機械受注の内訳に出てくる機械・機器類の企業活動における必要性は大きく高まるであろう。
 今、日本経済は長期の停滞から脱出しようともがいているが、将来、日本経済の成長力を高めるためには、景気後退期においても、GPTとして汎用的に活用されるICTへの設備投資は力強くあってほしい。

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